安い燃料は、高くつく


石炭サミットの会場となったポーランド経済省の前で行なわれた
抗議のパレード。健康被害や地球温暖化を考え、
石炭から自然エネルギーにシフトするべきだと訴えていました。

健康被害を訴える、巨大な肺の形をしたバルーン。
健康被害に苦しむ人とお医者さんvsお金持ちの石炭産業
という構造を模したスタントです。

世界第8位の産炭国でありながら、自然エネルギーへと舵を
切った隣国ドイツを見れば、同じような気候風土のポーランドにも、
豊かな再生可能エネルギー資源が眠っていることが分かります。

ポーランドのワルシャワより、温暖化担当の山岸です。
こちらでの国連の気候変動会議(COP19)が2週目を迎えた11月18、19日の両日、議長国であるポーランド政府が世界石炭協会と「世界石炭・気候サミット」を共催しました。

石炭―― それは市場価格が最も安く、温室効果が最も高い化石燃料です。

かつて産業革命を支えた石炭は、現在も広く利用されており、今後も消費量が増えると見られています。

世界の石炭の生産量は2000年から2012年までの2年間で69%も増加。年間で79億トンに達しました。これは産業革命以降、最大となる石炭の採掘・消費量です。

世界第9位の産炭国であるポーランドは、特にこの石炭を頼っており、今後さらに依存度を高める計画も立てています。

今回の石炭・気候サミットの目的は新技術による気候変動への貢献ですが、こうしたアピールもそうした姿勢の顕れの一つでしょう。

ですが、ポーランド国内では、安全かつ安価に採掘できる炭鉱が減っています。

2005年には石炭の輸入国に転じ、残された炭鉱も掘削コストが高く、落盤や爆発などの危険もあるため、石炭の安価が今後も守られる保障はありません。

また今年6月に中央ヨーロッパを襲った異常気象による大洪水の際には、ドイツ、ハンガリーなどと共に、ポーランドも大きな被害を受けました。

気候変動や大気汚染を招き、健康や環境のリスクを増大させる可能性を考えると、石炭の将来的なコストは、むしろ高くつくのです。

この石炭・気候サミットの開催を受けて、気候変動問題に取り組む世界のNGOの集まりであるCANインターナショナルは、ポーランドが石炭産業を支援しているとして「化石賞」を与えました。

COPの議長国として、脱・石炭依存に向けた姿勢を示すことが、今ポーランドには求められています。

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自然保護室長(気候エネルギー・海洋水産・生物多様性・金融)
山岸 尚之

立命館大学国際関係学部に入学した1997年にCOP3(国連気候変動枠組条約第3回締約国会議)が京都で開催されたことがきっかけで気候変動問題をめぐる国際政治に関心を持つようになる。2001年3月に同大学を卒業後、9月より米ボストン大学大学院にて、国際関係論・環境政策の修士プログラムに入学。2003年5月に同修士号を取得。卒業後、WWFジャパンの気候変動担当オフィサーとして、政策提言・キャンペーン活動に携わるほか、国連気候変動会議に毎年参加し、国際的な提言活動を担当。2020年より自然保護室長。

京都議定書が採択されたときに、当地で学生だったことがきっかけでこの分野に関心をもち、大学院を経てWWFに。以来、気候変動(地球温暖化)という地球規模の問題の中で、NGOがどんな役割を果たせるのか、試行錯誤を重ねています。WWFの国際チームの中でやる仕事は、大変ですがやりがいを感じています。

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