COP19 合意の鍵を握る資金問題


ポーランド・ワルシャワでの国連の温暖化会議(COP19)も終盤。COP19の成否を決する資金問題を話し合う閣僚級会合がスタートしました。

会場内では前日から、資金問題を前進させ、交渉全体の進展を求めるさまざまなアクションが行なわれています。

気候変動問題に取り組む世界のNGOの集まり「CANインターナショナル」も、会期中に発行する通信ecoで資金問題の特集を組みました。

途上国が温暖化の緩和に取り組みながら、深刻化する影響への適応も進めるためには、巨額の資金が必要です。

4年前のCOP15で、先進国はそのために必要な資金を拠出することに合意しました。

その金額は、2010~2012年に300億ドル(短期資金)、2020年時点で年間1,000億ドル(長期資金)。さらに、この間をつなぐ2013~2015年は600億ドル(中期資金)が必要とされています。

しかし、資金問題は前進しないまま4年が経過。このCOP19はその解決が期待された会議であることから、「資金COP」ともいわれています。

資金問題が未解決なのは、原資がないからではありません。

2009年から各国の化石燃料への補助金額を発表しているIEA(国際エネルギー機関)によれば、2009年に2,990億ドルだった化石燃料への補助金は2,450億ドル増加。2012年に5,440億ドルに達しました。

2020年から必要とされる長期資金の5倍以上の資金が化石燃料を安く見せるために使われているのです。

このことは、温暖化を招くために使われる資金の5分の1を、温暖化の防止・対応に振り向ければ、長期資金が確保できる可能性を意味しています。不足しているのはお金ではなく、政治の意志なのです。

COP19の会期はあと2日。この間に先進国と途上国の信頼を再構築し、交渉を前進させるためにも、先進国が資金問題の解決を図ることが求められています。

4年前、先進国が自ら誓った約束へ向けて大きな一歩を踏み出す時、それは今なのです。(温暖化担当:山岸)

通信ecoの特集号。対策のために必要な資金が赤字であることと、この問題が緊急を要することを示すため、あえてピンクの紙に印刷されています。

「ワルシャワ会議は資金COPだ」と、資金問題の前進を訴える若者たち。

会議終了まであと2日です。

■関連情報

この記事をシェアする

自然保護室長(気候エネルギー・海洋水産・生物多様性・金融)
山岸 尚之

立命館大学国際関係学部に入学した1997年にCOP3(国連気候変動枠組条約第3回締約国会議)が京都で開催されたことがきっかけで気候変動問題をめぐる国際政治に関心を持つようになる。2001年3月に同大学を卒業後、9月より米ボストン大学大学院にて、国際関係論・環境政策の修士プログラムに入学。2003年5月に同修士号を取得。卒業後、WWFジャパンの気候変動担当オフィサーとして、政策提言・キャンペーン活動に携わるほか、国連気候変動会議に毎年参加し、国際的な提言活動を担当。2020年より自然保護室長。

京都議定書が採択されたときに、当地で学生だったことがきっかけでこの分野に関心をもち、大学院を経てWWFに。以来、気候変動(地球温暖化)という地球規模の問題の中で、NGOがどんな役割を果たせるのか、試行錯誤を重ねています。WWFの国際チームの中でやる仕事は、大変ですがやりがいを感じています。

人と自然が調和して
生きられる未来を目指して

WWFは100カ国以上で活動している
環境保全団体です。

PAGE TOP