交渉の前進を求める声が響く


ペルーのリマより、温暖化担当の山岸です。
8日、ここで開かれている国連の気候変動会議(COP20)の会場に向かう参加者は、大きな写真を手にした若者の列に迎えられました。

昨年、フィリピンを襲った台風30号の被害状況を映した写真です。

この3年、フィリピンは毎年末、ちょうどこのCOPの会期中に、季節はずれの巨大台風の直撃を受けてきました。

COP20会場の入り口で交渉の前進を訴える若者

特に、昨年の台風30号では、およそ1,200万人が被災し、7,000人を超える死者・行方不明者を出しました。

そして今年、1年前の被災地に再び上陸した台風22号は、これまでに少なくとも21人の死者を出し、1,200万人の人口を抱えるマニラ首都圏に迫っていると報じられています。

世界900のNGOでつくるCANインターナショナルでは、すべての会議関係者に、気候変動による被害者のために集い、黙祷を捧げるよう求めました。

「(国際交渉の遅れという)狂気を終わらせ、今こそ行動しよう」と書かれた横断幕を手にスピーチを行うフィリピンの参加者

この黙祷の後、フィリピンのNGOメンバーは次のように訴えました。

「フィリピンは毎年、この国際交渉のさなかに巨大台風に襲われています。各国はそのたびに弔慰と哀悼の意を表してくれます。しかし、その言葉とは裏腹に、交渉を遅れさせた代償をフィリピンに払わせ続けています。私たちに必要なのは同情ではなく連帯です。安全に暮らせる未来のための交渉の進展です」

2013年にフィリピンを襲った台風22号の被害を記録した写真を掲げる若者

今週、2週目の折り返しに入ったCOP20は、いよいよ閣僚級会合を迎えます。

ここリマに入る各国のリーダーたちは、この声に耳を傾け、言葉を行動に移すことが求められています。

メッセージボードには、「同情ではなく、正義と連帯を」と書かれている

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自然保護室長(気候エネルギー・海洋水産・生物多様性・金融)
山岸 尚之

立命館大学国際関係学部に入学した1997年にCOP3(国連気候変動枠組条約第3回締約国会議)が京都で開催されたことがきっかけで気候変動問題をめぐる国際政治に関心を持つようになる。2001年3月に同大学を卒業後、9月より米ボストン大学大学院にて、国際関係論・環境政策の修士プログラムに入学。2003年5月に同修士号を取得。卒業後、WWFジャパンの気候変動担当オフィサーとして、政策提言・キャンペーン活動に携わるほか、国連気候変動会議に毎年参加し、国際的な提言活動を担当。2020年より自然保護室長。

京都議定書が採択されたときに、当地で学生だったことがきっかけでこの分野に関心をもち、大学院を経てWWFに。以来、気候変動(地球温暖化)という地球規模の問題の中で、NGOがどんな役割を果たせるのか、試行錯誤を重ねています。WWFの国際チームの中でやる仕事は、大変ですがやりがいを感じています。

人と自然が調和して
生きられる未来を目指して

WWFは100カ国以上で活動している
環境保全団体です。

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