伊藤健次著「アイヌプリの原野」を読んで
2016/07/14
こんにちは、温暖化担当の下元です。
WWF温暖化の目撃者の一人として、北海道の冬の自然が変わりつつあることを報告してくれたカメラマンの伊藤健次さんが、誰も知らない北海道の幻想的な自然を写した本を出されたので、さっそく読んでみました。
表紙を見ただけで、未知の世界へ連れて行かれる予感がしました。
ページを開くと、著者の率直な文章と、北海道の原野の生き物たちの何気ない姿を収めた写真が心に染みます。
自然の一部として生きようとする著者の姿勢が伝わってきます。
伊藤さんは、実際に見たり聴いたりしたいために、北海道の山野や海に足を運び、そこで出会ったものを、アイヌの詩を交えてリズミカルに、そしてそれを日本語に訳して届けてくれています。
動物や植物のアイヌ語での呼び名を説明してあるので、アイヌの人たちの目線で見ている気持ちにさせられ、熊が山の神として立ち現れます。
アイヌの文化を伝えるだけでなく、大雪山中央部の五色ヶ原の花畑がこの20年で急速に減少していることに地球温暖化の影響を危惧し、経済や情報のグローバル化で世界が狭くなっている時代に、アイヌ民族の身の回りの野草に想いを託す姿に安心感を覚える、伊藤さんの感じたことがつづられていて、親近感を覚えます。
海では、人間が作った境界線によって、イルカたちが泳いでいく先までついていけないもどかしさや人間のおろかさが語られています。そこが伊藤さんの文章の魅力なのかもしれないと思います。
本全体を通して、アイヌ語の響きや風や海の音が心地よく響いています。
すごく素敵な世界なので、読み終わるのがもったいない、また何度でも訪れたいところです。