ソーシャルファイナンスの教科書


以前、アメリカの大学院で、途上国の貧困層に、少額を貸し付けてビジネスを支援するマイクロファイナンスという手法を知り、非常に感銘を受けました。

魅力を感じたのは、「途上国支援も環境保全も、ビジネスに乗せて解決していく」そんな取り組みが持つ現実的な視点です。

そこで数年前、日本でもマイクロファイナンス・ボンドが発売されることを知って以来、私も途上国の女性支援ファンドなどに投資する、小さな小さな投資家になったのですが、最近すばらしい本に出会いました。

『ソーシャルファイナンスの教科書―「社会」のために「あなたのお金」が働くということ』(河口真理子著)。著者は、社会にインパクトを与える投資を説く日本の第一人者です。

「環境配慮=儲かる」という新しい価値観を分かりやすく説明しながら、「投資には社会発展のカタチを変える力があります」「長期的には社会に役に立つ会社でなければ生き残れません」といった、印象的な言葉が多くつづられています。

また、モノ作りは尊いけれど、投資は額に汗することなくお金を動かすだけなので、尊敬されないのではないか、といった、日本が投資に積極的でない理由も分析しています。

ですが、社会に影響を与える投資は、どんな課題の解決に自分のお金が使われるか、それがはっきり分かるので、自分でも何か社会に貢献したいと考える個人にはぴったりの手法だともいえます。

『ソーシャルファイナンスの教科書―「社会」のために「あなたのお金」が働くということ』河口真理子著 生産性出版

これらの投資は、いずれも基本的にローリスク型の債権投資なので、大きな値上がりが期待できるものではありません。それでも「確実に社会によいことをして、少し利子がつく投資で、感覚的には定期預金や寄付に近い」と著者は説きます。

こんな感覚の投資が、もっと広がるといいなと心から思います! 関心をお持ちの方は、ぜひこの本をお手に取ってみてはいかがですか?(温暖化担当 小西)

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専門ディレクター(環境・エネルギー)
小西 雅子

博士(公共政策学・法政大)。米ハーバード大修士課程修了。気象予報士。昭和女子大学特命教授、京都大学院特任教授兼務。
中部日本放送アナウンサーなどを経て、2005 年に国際 NGO の WWF ジャパンへ。専門は国連における気候変動国際交渉及び国内外の環境・エネルギー政策。2002 年国際気象フェスティバル「気象キャスターグランプリ」受賞。環境省中央環境審議会委員なども務めている。著書『地球温暖化を解決したい―エネルギーをどう選ぶ?』(岩波書店 2021)など多数。

世界197か国が温暖化対策を実施する!と決意して2015年に国連で合意された「パリ協定」の成立には感動しました!今や温暖化対策の担い手は各国政府だけではなく、企業や自治体・投資家・それに市民です。「変わる世の中」を応援することが好きな小西です♪

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生きられる未来を目指して

WWFは100カ国以上で活動している
環境保全団体です。

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