センザンコウ保護が一歩前進!ワシントン条約会議より


南アフリカで開催されている第17回ワシントン条約締約国会議(CITES COP17)。

開始から6日が過ぎた会場では、参加している各国政府の代表たちが、人間による過剰な利用から野生生物を守るための議論を続けています。

その中で、私たちが注目する「センザンコウ」の保護について進展がありました。

センザンコウは爬虫類のようなウロコをまとった、とても珍しい哺乳類で、アジアとアフリカにそれぞれ4種が生息しています。

マレーセンザンコウ

しかし、肉は食用、皮は皮革製品、そしてウロコは伝統薬の原料として特にアジアで多く利用され、今、世界で一番密猟されている哺乳類とも言われています。

センザンコウは、1995年に全種が条約の附属書IIに掲載され、アジア産については2000年から「輸出割当0(ゼロ)」という、実質的な輸出禁止措置が取られてきました。

しかしその後、アフリカ産の種に対する取引圧が高まり、アジアの種をアフリカの種と偽る違法取引も横行。

センザンコウのウロコ

そこで今回の会議では、各生息国が、センザンコウ全種を附属書Iに移行して、国際的な商業取引を禁止する提案を含む、5つの提案を行ないました。

そして、この附属書Ⅰへの掲載について、先日合意が成立しました。

正式な採択はまだこれからですが、これによって国際間のセンザンコウの商業取引は、全面禁止となります。

しかし、必ずしもこれは万能の手立てとは言えません。

各国の状況を考えずに禁止を強行すると、審議でも指摘された通り、闇取引が活発化してしまう懸念があるためです。

センザンコウの皮を利用した製品

とはいえ、大幅な個体数の減少や、種の識別の難しさなどの点から見て、今回の合意は、センザンコウ保護に向けた一歩として期待されます。

また、これら課題に対する対策強化に関する新しい「決議」と「決定」も合意が成立した、との情報が入ってきました!

今後は、生息国と消費国、双方での密猟や違法取引への対策強化が求められることになります。

センザンコウは日本はほとんど輸入していない動物ですが、こうした取り組みににも、条約の締約国としてぜひ貢献してほしいと思います。(トラフィック 西野)

ワシントン条約会議の会場での写真。センザンコウたちも議論の行方を見守っています!?

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自然保護室(野生生物 グループ長)、TRAFFIC
西野 亮子

学士(芸術文化)
2009年よりTRAFFICにて広報分野を中心に従事し、イベント運営、出版物作成などワシントン条約に関する普及啓発に努める。2016年からは重点種(特に注力すべき種)プログラム推進に携わり、取引を中心とした現状調査を担当。2018年以降は、関係する行政機関や企業へ働きかけ、取り組み促進を促す活動に従事し、野生生物の違法取引(IWT)の撲滅、持続可能ではない野生生物取引削減を目指す。ワシントン条約第70回常設委員会参加。東京都象牙取引規制に関する有識者会議委員(2022年3月終了)

「野生生物を守る」ことを起点に、そこに暮らす人、その場所の環境、そして利用する側の意識、すべての段階で取り組みが必要です。生息地から市場まで、それらを繋ぐことが私の役割です。

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