「パリ協定」が拓く未来


アフリカのモロッコ、マラケシュより温暖化担当の小西です。

こちらで今開かれている国連の気候変動会議COP22会場は、会議場のあるブルーゾーンと、展示場のあるグリーンゾーンで構成されています。

このグリーンゾーンは市民団体や企業などが展示を行なっているエリアで、連日、多くのマラケシュ市民で賑わっています。

展示されているオランダの大学が制作したソーラーカー。搭載する太陽電池は1500Wで走行距離は400km。晴れていれば800kmに伸びるそうです

特に目立つのは、洗練された産業界の展示。

エネルギー機器メーカーやエネルギー事業者、銀行などの投資機関などが出展しており、いたるところでセミナーも開催されています。

まるで産業見本市、あるいは再エネ博覧会といってもいいでしょうか。

私も長年、国連の温暖化会議に参加してきましたが、このような光景は初めてです。

砂漠に建設された太陽光発電所の模型。モロッコ政府は、太陽光などの再生可能エネルギーの設備容量に占める割合を2020年までに42%、2030年までに52%に高める目標を掲げました。その目標の実現を、多くの企業がビジネスの拡大に生かそうとしています

二酸化炭素の排出をゼロにすることを目指す、世界の合意「パリ協定」。

それは、石油や石炭などの化石燃料に頼らない、新しい経済システムへの移行を告げました。

この事実は同時に、産業界にとって、温暖化対策がもはや社会貢献ではなく、大きなビジネスチャンスになったことを意味します。

モロッコの4大メガバンクの展示

会議場に戻ると、アメリカ大統領選の結果を受けた投資機関グループの記者会見やサイドイベントで、次のようなメッセージが発せられていました。

「気候変動のリスクは、投資のリスクでもある。投資機関がそのリスクを回避し、持続可能であり続けるには、エネルギー転換への投資が不可欠だ。誰が大統領になろうと、この潮流を変えることはできない」

再生可能エネルギーを主流とした、脱炭素経済というゴールに向けて、世界は走り出しています。

マラケシュ市内からやってきた子どもたち。この展示場の光景は、何よりもよくパリ協定が拓く未来を示しています

関連情報

現地より動画配信中!

COP22会場より、WWFジャパンのスタッフが現地の様子をお届けしています。

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専門ディレクター(環境・エネルギー)
小西 雅子

博士(公共政策学・法政大)。米ハーバード大修士課程修了。気象予報士。昭和女子大学特命教授、京都大学院特任教授兼務。
中部日本放送アナウンサーなどを経て、2005 年に国際 NGO の WWF ジャパンへ。専門は国連における気候変動国際交渉及び国内外の環境・エネルギー政策。2002 年国際気象フェスティバル「気象キャスターグランプリ」受賞。環境省中央環境審議会委員なども務めている。著書『地球温暖化を解決したい―エネルギーをどう選ぶ?』(岩波書店 2021)など多数。

世界197か国が温暖化対策を実施する!と決意して2015年に国連で合意された「パリ協定」の成立には感動しました!今や温暖化対策の担い手は各国政府だけではなく、企業や自治体・投資家・それに市民です。「変わる世の中」を応援することが好きな小西です♪

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