大幅なCO2削減となる「鉄リサイクル」の推進[東京製鐵×九州電力 後編]
2020/08/21
温暖化対策というと、一般的には電気や自動車などからの排出対策を思い浮かべるかと思います。それらも大きな排出源ではあるのですが、実は産業の中でも大きな排出源が、鉄鋼業なのです。
「鉄は国家なり」といわれた時代がありますが、今も鉄鋼産業は現代文明の中心的な担い手であることには変わりはありません。都市のビルやタワー、自動車や飛行機はもちろんのこと、近代資本主義を産み出した大量生産の工場など、鉄が建築材料となって私たちの現代社会が成り立っています。
一方で、鉄は石炭を使って鉄鉱石を還元して作られるため、実は最も二酸化炭素排出量が多い産業なのです。日本のCO2排出量の約12億トンのうち、鉄鋼業のプロセス由来のCO2排出量はそのうちの約14%(2016年度)も占めます。そのため、脱炭素社会を実現するには、この鉄鋼部門からの排出量をいかに減らせるかも大きなカギとなります。
もちろん、還元する過程で石炭を使わずに水素などを使って二酸化炭素を出さない製造方法も考えられていますが、まだ実用化されるのは数年以上先です。でも今すぐ二酸化炭素の排出を減少させる方法もあるのです。それは、「鉄リサイクル」を進めること!
先進国日本はすでに高層ビルなどが立ち並ぶ、いわゆる「都市鉱山」の宝庫です。この「都市鉱山」からは、毎年取り壊された建築物などから鉄スクラップが大量に発生しています。こういった鉄スクラップを電気の炉で溶かしてリサイクルすると、鉄1トン製造するときのCO2排出量を4分の3も削減することができるのです。
実はすでにアメリカでは、リサイクル鋼材の生産比率は70%近くに達しており、欧州では40%程度です。しかし日本の現状は、リサイクル鋼材の生産比率が25%程度と低くなっています。この比率をまずは欧米並みに上げることで、日本の鉄鋼業のCO2排出量を大幅に削減することが可能となるのです。
いずれCO2の排出をゼロにするパリ協定時代は、まさに“循環型社会”が根底です。そのカギの一つである鉄リサイクル率の向上を日本も速やかに図っていきたいものです!鉄リサイクルに取り組んでいる東京製鐵を取材してきましたので、ぜひご覧ください。