2019年 WWFジャパンより新年のご挨拶
2019/01/01
明けましておめでとうございます。
新年にあたりWWFジャパン事務局を代表し、皆さまのご多幸をお祈り申し上げます。
昨年は、自然保護の仕事に従事しているからこそ、地球が育む「命」について色々と考えさせられることがあった1年でした。
1800年頃には約10億人だった地球上の人口は、私が小学生の頃には35億人ぐらいだったと記憶しており、先生に説明していただいても実感がわかないほど大きな数字で子供心に世界の大きさに驚いた記憶があります。それがわずかこの半世紀で75億人を突破し、毎日20万人ずつ増えていると言われています。また、農業技術の進化や医療の発達、戦争の抑止や天然資源の開発利用はどれも人類の努力の賜物であり、多くの人々が健康で長生きできるようになったことは素晴らしい進化だと思います。
しかし、その一方で、川や海の魚たち、野鳥や昆虫たちなど地球上の多くの野生生物はどんどん数を減らしています。2018年10月に発表した最新の「生きている地球レポート2018」では、1970年と比べて脊椎動物の個体群の大きさが60%も減少していると警鐘を鳴らしています。人類が経済成長のみを追い求め、地球を無秩序に開発し、生態系を破壊して生物多様性が失われることは、自然界で生物が自然淘汰されてゆくこととは全く異なる問題です。
このレポートでは蜂や蝶などの授粉生物の減少が見られることに危機感を示しています。自然界で農作物や果物が収穫できるのは、授粉生物の無償の協力によるところが大きいからです。こうした自然生態系がもたらす全てのサービスをお金で換算すると、なんと年間125兆ドル、日本円では1京4000兆円にも相当するという試算もあります。自然界では全ての生物が絶妙なバランスで相互に関与しあって全体が機能しており、その歯車の一つが欠けても不具合が生じてしまいます。
人間が引き起こした問題は、人間が解決してゆかねばなりません。そこに世代間の不公平があるにしても、これ以上解決を先送りにする猶予はないと思います。
人類の長い歴史の中で、私たちに与えられた使命は余りに大きく、責任重大です。だからこそ誰かにその解決を委ねて待つのではなく、地球の住民として、生物多様性豊かなこの美しい星の自然を未来に引きついでいけるように自ら行動して解決してゆきたいと思います。
本年も気持ちを新たに、国境を超えた国際NGOという立場から、活動に取り組んでまいりますので、変わらぬご理解とご支援のほどを心よりお願い申し上げます。