トランプ大統領のパリ協定離脱宣言の事実誤認
2017/06/16
温暖化担当の小西雅子です。
6月1日に発表された、トランプ大統領の「パリ協定」離脱宣言。先日も、G7の環境大臣会合で、これが大きな話題になりました。
トランプ大統領いわく、パリ協定は「アメリカ経済をダメにする、不公平な協定」。
特に「中国は13年間、好きなだけ温室効果ガスを排出できるし、インドは何十億ドルもの資金を先進国が支援しない限り、パリ協定にコミットしない」と、この両国を名指しで批判しています。
ところが、そんなことはありません。
実はここにも、トランプ大統領の大きな事実誤認 の一つがあります。
まず、中国は、 風力と太陽光の発電容量が世界1位(2015年)※。2位のアメリカの倍以上の1億4000万kWに達しています。
さらに、2015年の1年間で3000万kW(原発約30基分)の風力発電設備を新設。
インドも太陽光が第9位、風力は大国スペインを抜き世界4位に浮上しました。
つまり両国は、すでに世界屈指の再生可能エネルギー大国なのです。
さらに、パリ協定に提出した再生可能エネルギー目標でも目下世界をリード。中国は風力で2億kW、太陽光で1億kW、インドも2022年までに太陽光で1億kWを達成と、高い目標を掲げています。
もちろん、ドイツ、スペインなどの再エネ先進国もさらに力を入れているほか、ブラジルなどの新興国もこれに続いています。
背景に大きくあるのは「太陽光や風力の方が、石油や石炭などの化石燃料より安くなった」という経済原則に基づく理由。
ここから考えると「パリ協定」に対するトランプ大統領の誤認 が、むしろアメリカ経済に悪影響を与えてしまうことがわかります。
アメリカではこれに対し、1200を超える企業や州政府、都市、投資家たちが「パリ協定を守っていく」宣言をしました。
この動きは今後もさらに大きくなりそうです!
WWFジャパンの声明
参考書籍
世界の新しい温暖化防止の約束「パリ協定」とは何か? 1から知りたい!という方はぜひ拙著「地球温暖化は解決できるのか ~パリ協定から未来へ~」をご参照ください。