仔トラが密猟のターゲットに
2017/08/30
※2023年6月26日をもって、WWFロシア(Vsemirnyi Fond Prirody)はWWFネットワークから離脱しました。
自然保護室で極東ロシアを担当している川江です。
昨年、推定で3,980頭と発表された、野生のトラの個体数。減少傾向にわずかながら歯止めが掛かったものの、まだまだ絶滅の危機が高いことに変わりはありません。
そんなトラを脅かす要因の1つが密猟。
時には、仔トラがこうした密猟のターゲットになることもあります。
2017年1月、極東ロシアの沿海地方で5~7か月のオスの仔トラが顔に瀕死の重傷を負っている状態で発見され、リハビリテーションセンターに搬送されました。
現場検証によると、どうやらこの仔トラは、母親や兄弟と一緒にいたところを、密猟者に撃たれたようでした。
その後、政府関係者やNGO、研究所の専門家・獣医による緊急会合で、手術が決定。
すぐさま壊死した組織を除去し、折れていた鼻の骨を矯正する、大手術が行なわれました。
さらに、眼球や血液の検査、その他の部位のレントゲン検査も実施。
特に、視力が失われていれば野生復帰の道が閉ざされることから、現地の専門家やWWFスタッフは、目の状態を最も心配していましたが、幸い眼球に異常はなく、わずかながら野生復帰の可能性が残されました。
この懸命の手術の結果、仔トラの呼吸機能は回復。その後、骨も徐々に治癒していることがわかりました。
しかし、野生復帰のためには、傷が完治し、さらに母トラなしで狩りの能力を身に付けねばならないなど、まだまだ高いハードルをクリアしなければなりません。
WWFロシアの専門スタッフは保護から手当て、リハビリまで携わりながら、まさにトラ1頭1頭を絶滅の淵から救っています。
担当として、今後もロシアのスタッフと密に連絡を取りながら、現場の活動をサポートしていきたいと思います。