極東ロシアの大雪でトラがピンチに!?


※2023年6月26日をもって、WWFロシア(Vsemirnyi Fond Prirody)はWWFネットワークから離脱しました。

自然保護室の川江です。
先日、中国の汪清自然保護区から帰ってきて早々、国境を挟んだ極東ロシア側から大雪のニュースが届きました。

中国側は例年の並みの積雪量だったのですが、ロシア側では草食動物と、それを食物とするシベリアトラの生存を脅かすほどの積雪量だそうです。

極東ロシアのハバロフスク地方と沿海地方南部では、2014年11~12月に大雪が降り、特に12月上旬の2日間で、例年の1か月分に相当する1mの雪が積もったそうです。

 

極東ロシアに生息するノロジカとニホンジカは30cm、アカシカは40~50cm、ヘラジカは70cmの積雪で、移動し食物を採ることが困難になるといわれています。

1980年代後半の大雪の時には、草食動物の個体の80%が死んだ地域もあったそうですが、今冬も既に一部の地域では、若い個体が多数死んでいるのが確認されています。

こうした状況が続けば、トラもまた獲物を失い、飢えに追い込まれることになるでしょう。

雪に埋もれるシカ

さらに、雪が多くなると、トラは除雪された道路や線路を使って移動することが増えるため、密猟者に狙われるリスクも高くなる上、今冬を何とか生き延びたとしても、草食動物が大きく減少すれば、春以降も食物の不足に直面することになります。

WWFロシアでは、この緊急事態に対し、草食動物の餌場を設置するなどの対策を実施していますが、こうした野生動物の餌付けや、限られた場所への動物の集中は、自然の生態系に影響を及ぼし、密猟の危険を高めるおそれがあるため、慎重に行なう必要があります。

極東ロシアでは、2月15日に10年に一度の大規模なトラの個体数調査が終わったばかりですが、この調査では草食動物の個体数調査も一部で行なわれており、結果が気になるところです。

この記事をシェアする

自然保護室長(森林・野生生物・マーケット・フード・コンサベーションコミュニケーション)、TRAFFICジャパンオフィス代表
川江 心一

京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科修士課程修了。
小学生の頃に子供向け科学雑誌の熱帯雨林特集に惹きつけられて以来30年間、夢は熱帯雨林保全に携わること。大学では、森林保全と地域住民の生計の両立を研究するため、インドネシアやラオスに長期滞在。前職でアフリカの農業開発などに携わった後、2013年にWWFに入局。WWFでは、長年の夢であった東南アジアの森林保全プロジェクトを担当し、その後持続可能な天然ゴムの生産・利用に関わる企業との対話も実施。2020年より現職。

小学生の頃に科学雑誌で読んだ熱帯雨林に惹きつけられると同時に、森林破壊のニュースを知り「なんとかしなきゃ!」と思う。以来、海外で熱帯林保全の仕事に携わるのが夢でしたが、大学では残念ながら森林学科に入れず・・。その後、紆余曲折を経て、30半ばにして目指す仕事にたどり着きました。今でもプロジェクトのフィールドに出ている時が一番楽しい。

人と自然が調和して
生きられる未来を目指して

WWFは100カ国以上で活動している
環境保全団体です。

PAGE TOP