森の中に響き渡る銃声


自然保護室の川江です。
先日、WWFジャパンが支援する、インドネシア スマトラ島のブキ・バリサン・セラタン国立公園に行ってきました。

ブキ・バリサン・セラタン国立公園は、東西20km、南北200kmに伸びる細長い形をした国立公園です。ここには、ゾウ、トラ、サイといった絶滅危惧動物が生息する貴重な熱帯林が広がっています。

そんな国立公園の大きな問題の1つが、公園内を東西に横切る2本の道路です。

国立公園内の小屋

この道路は、2つの問題を引き起こしています。

1つは、道路が野生動物の生息地を分断していること。道路ではバイクや車、トラックが24時間往来しているため、警戒心の強い動物は道路を横断することはできません。

そして、もう1つの問題は、こうした道路によって、密猟者が国立公園内の森林奥深くに容易に侵入できるようになっていることです。

国立公園を横断する道路_毎年雨期になると土砂崩れが起きる

先日の訪問時、この道路から森を見ていると、国立公園の奥深くに違法に建てられた小屋が見えました。

さらに、そこから少し離れた場所で、美しいサイチョウと森の風景の写真や動画を撮っていると、突然森の奥から銃声が響き渡りました(動画)。

もちろん銃声の主は見えないため、この銃声が何だったのかははっきりとわかりません。しかし、この銃声が密猟者のものであった可能性は否定できません。

サイチョウ

WWFジャパンでは、密猟を取り締まるためのパトロール活動だけでなく、地域の人たちがこうした違法行為に従事しなくても十分に収入を得られるようにするための有機農業等への支援も行なっています。

今後も、密猟防止と地域の人たちの生活の向上の両面からインドネシアの自然保護活動を支えて行きたいと思います。

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自然保護室長(森林・野生生物・マーケット・フード・コンサベーションコミュニケーション)、TRAFFICジャパンオフィス代表
川江 心一

京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科修士課程修了。
小学生の頃に子供向け科学雑誌の熱帯雨林特集に惹きつけられて以来30年間、夢は熱帯雨林保全に携わること。大学では、森林保全と地域住民の生計の両立を研究するため、インドネシアやラオスに長期滞在。前職でアフリカの農業開発などに携わった後、2013年にWWFに入局。WWFでは、長年の夢であった東南アジアの森林保全プロジェクトを担当し、その後持続可能な天然ゴムの生産・利用に関わる企業との対話も実施。2020年より現職。

小学生の頃に科学雑誌で読んだ熱帯雨林に惹きつけられると同時に、森林破壊のニュースを知り「なんとかしなきゃ!」と思う。以来、海外で熱帯林保全の仕事に携わるのが夢でしたが、大学では残念ながら森林学科に入れず・・。その後、紆余曲折を経て、30半ばにして目指す仕事にたどり着きました。今でもプロジェクトのフィールドに出ている時が一番楽しい。

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生きられる未来を目指して

WWFは100カ国以上で活動している
環境保全団体です。

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