沖縄県名護市辺野古における新たな土砂投入工事の即時中止とジュゴンの保護対策を求める声明


内閣総理大臣  安倍 晋三 様
内閣官房長官  菅 義偉 様
国土交通大臣  石井 啓一 様
防衛大臣  岩屋 毅 様
環境大臣  原田 義昭 様
沖縄・北方担当大臣  宮腰 光寛 様
沖縄防衛局長  中嶋浩一郎 様

(公財)世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン)
 会 長  末吉 竹二郎 
 

 日本政府は、米軍普天間飛行場代替施設建設事業(以下、「同事業」)に伴う名護市辺野古沿岸部の新たな区域で土砂投入に向けた工事を3月25日に始めた。また、3月18日、沖縄島今帰仁村運天漁港沖の防波堤付近にてジュゴンが死んだ状態で発見された。WWFジャパンは、日本政府に対し、土砂投入に対する抗議の意と、ジュゴン保護に対する要望を示した緊急声明を表明する。

 日本政府は、2018年12月14日に沖縄県名護市辺野古における土砂投入を開始した。WWFジャパンは、この日本政府の行為に対し、貴重な自然が残る辺野古周辺の環境を脅かすものでもあり、抗議の意を示す緊急声明を表明した。その後、2月24日に実施された沖縄県名護市辺野古の米軍新基地建設に必要な埋め立ての賛否を問う県民投票では、埋め立てに「反対」の得票が投票総数の7割を超え基地建設反対の民意がより明確に示されたにも関わらず、工事を継続し、3月25日には新たな地区に土砂の投入を開始した。これは、当公益法人の意思を無視するだけではなく、地元沖縄県民の多くの民意を裏切る行為であり、大変遺憾である。

 南西諸島の島々及び沿岸海域は、世界的にも貴重且つ生物多様性に富む生態系を有しており、WWFジャパン設立当時より、その保全活動に取り組んできた。その中でも、沖縄本島北部沿岸の辺野古沿岸や大浦湾は、アオサンゴ群集の世界の北限に位置し、これまでに数多くの新種の甲殻類をはじめ、ジュゴンをはじめとした絶滅危惧が多く生息・生育する重要な生息・生育海域であることが、これまでの調査により明らかとなっている。しかし、3月18日、沖縄島今帰仁村運天漁港沖の防波堤付近にてジュゴンが死んだ状態で発見された。さらに、生存が確認されていた2頭の個体の生息も現在確認されていない。WWFではこれまで、同事業に対し、当該地域の生態系を損失する行為であると指摘し、たびたびの計画の見直しを内閣府、防衛省、環境省など関係機関に要請を重ねてきたが、その指摘が現実のものとして現れている。日本政府は、早急に工事を中止し、死亡した個体の死因と工事との関連の解明、2頭の捜索と保護対策を行う必要がある。

 今日、海洋を含む自然環境は急速に悪化し、私たちの生活の安全を脅かすまでになっている。社会や経済の発展は、健全な自然環境なくしては成り立たない。沿岸の新たな土砂投入および埋め立ては、現在および将来の地域住民の健康で文化的な生活基盤となる自然環境を脅かすことにほかならない。

 WWFジャパンはこれまで提出してきた要請内容とともに、ここに改めて、対象海域の生物多様性保全の観点から、現在進められている土砂投入の中止と、ジュゴンに対する調査と保護対策の実施を要求する。同時に政府並びに関係省庁に対し、辺野古周辺の自然の豊かさをあらためて認識するとともに、沖縄県を始めとする地方自治体はもとより、関係省庁や住民など、様々な関係者の意見、沖縄県民の民意を踏まえ、貴重な沖縄の自然の保全をいかに実現するかを議論し実施するよう強く求める。

以上

 

お問い合わせ先

C&M室プレス担当 Email: press@wwf.or.jp

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