© Andy Isaacson / WWF-US

ポスト・コロナの未来に向けG20サミットが「リヤド首脳宣言」を採択

この記事のポイント
2020年11月21日、G20サミットが開催され、その成果が「リヤド首脳宣言」として公開されました。各国政府はこの宣言において、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の危機を克服し、多国間の協力のもと、衡平で強靭な持続可能な未来を築くことを約束すると表明。「リヤド首脳宣言」は、2021年に予定されている、生物多様性条約会議(CBD-COP15)や今後の日本の国内政策にも、ポスト・コロナの在り方を示すものとして、影響力を発揮することが期待されます。

開催されたG20サミットとG20環境大臣会合

2020年11月21日から22日にかけて、G20サミット会合がオンラインで開催されました。

サウジアラビアが議長を務めたこの会合で、各国政府の首脳は、すでに130万人の犠牲者を出している、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への対応と、世界経済の回復などを中心に協議を行ない、最後に38項目におよぶ「G20リヤド首脳宣言」を採択しました。

宣言の柱となったのは、コロナ禍への対応と回復、それにあたっての衡平性の確保と、持続可能な未来の構築。

この中で、保健、経済、雇用、金融、環境、エネルギー、教育など、幅広い分野について、その在り方が明示されました。

特に、環境に関する内容に関しては、G20 サミットに先立ち、2020年9月16日に開催された、G20 環境大臣会合での議論の結果が、強く反映される形となりました。

このG20環境大臣会合の結果をまとめた公開資料「G20環境大臣会合コミュニケ」では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)と環境破壊の関係性について言及。

G20 としても、貧困、保健、経済、環境問題を、相互関に連性した課題として捉え、解決を目指していく姿勢を明らかにしていました。

注目される「ワンヘルス」の取り組み

この発表資料には、こうした多分野にかかわる取り組みを実現する上で重要なカギとなる、「ワンヘルス」という考え方についても、記述がありました。

そもそも、新型コロナウイルス感染症は、動物由来感染症と言われる新興感染症の一つ。

こうした感染症は、開発や土地改変に伴う自然破壊が進み、人や家畜がウイルスの宿主である野生動物と接触する機会が増えたことで、発生頻度が上がっていると考えられています。

そのため、人、動物、生態系の健康を一つのものと捉える「ワンヘルス」という考え方に基づいた対策が、国際的にも注目されているのです。

実際、「G20環境大臣会合コミュニケ」では、「ワンヘルス」に基づいた取り組みを、新型コロナウイルスのような感染症のリスクを軽減する上で欠かせない、生態系や生物多様性の保全と保護、野生生物の違法取引との闘いにおいて、国際協力のもと、強化すべきことを訴えています。

G20サミットのメッセージが持つ重要性

今回のG20 における「リヤド首脳宣言」は、今後の国際世論を形成する大きな要素の一つとなります。

2021年には、生物多様性条約の締約国会議(CBD-COP15)の開催も予定されていますが、ここでも重要なテーマとなる、ポスト・コロナの世界に向けた生物多様性の保全を、強力に後押しするメッセージとなるでしょう。

こうした期待から、このG20に向け、WWFやトラフィック、CI(コンサベーション・インターナショナル)、TNC(The Nature Conservancy)、WCS(Wildlife Conservation Society)、バードライフ・インターナショナル、ZSL(ロンドン動物学会)など世界の20の国際機関が結成したイニシアチブ「WC20(Wildlife Conservation 20:野生生物保全)」は、2020年11月20日、共同宣言を発表しました。

WC20は、この共同宣言の中で、すでに130万人が犠牲となり、世界全体がその影響を受けている、新型コロナウイルス感染症のパンデミックは、人と自然との関係が、非持続不可能なものになっている現状に対する、最も厳しい警告であると指摘。

同時に、この危機からの回復は、森林破壊の防止や、野生生物の取引の管理、自然と共存した人々の暮らしの向上を含む「ワンヘルス」を基礎とした取り組みと、並行して実現できるものであることを訴えました。

破壊が進む南米アマゾンの森。経済政策や投資のあり方が、こうした大規模な環境が守られるか、失われるかを決めている。
© Luis Barreto / WWF-UK

破壊が進む南米アマゾンの森。経済政策や投資のあり方が、こうした大規模な環境が守られるか、失われるかを決めている。

また、これらの取り組みに必要なコストは、26兆ドルともいわれる新型コロナウイルス感染症の経済的被害と比べ、ごくわずかであること。

毎年7,000億ドルを投資すれば、2030年までに世界の生物多様性の喪失の傾向を逆転させ、保全と回復が実現できることを明示しました。

それは、国連のSDGs(持続可能な開発目標)の実現と、地球温暖化(気候変動)の深刻な影響を抑えることにも通じる、世界にとっての最優先行動です。

G20はまさに、これを実現する上で欠かせない、グリーンな経済政策を推し進めていくことのできる、強力な母体の一つといえるでしょう。

今後、日本を含むG20 諸国が、今回の「宣言」の理念にたがうことなく、国際協調とそれぞれの国内政策の両面において、持続可能な未来に向けた取り組みを推進していくことが期待されます。

参考:WC20の推奨事項(概要)

政策と実施について:
人間や動物の健康を脅かさない、野生生物を含む資源の合法かつ持続可能な利用を、追跡可能な形で確実に行なうこと。
そのための既存の国際法と国内法を強化、新法を制定し、実施のための資金や人材を十分に投入すること。

法執行機関:
重要な野生生物の生息国・地域、さらに取引の経由地や、最終的な消費の市場を有する国や地域に対し、財政的、技術的な支援を拡充すること。
密猟や違法取引といった野生生物犯罪を効果的に抑止するため、学際的な協力に基づいた取り組みを行なうこと。

生態系の保全:
政府は、生態系と野生生物の効果的な保全・管理を推進するため、技術や専門性を確保し、財政面を含めた支援を行なうこと。
それらの取り組みの評価と保護を通じた、経済活動を推進すること。また、今後10年の間に、こうした取り組みを陸上および海洋の30%にまで拡げるよう約束すること。

先住民と地域社会の支援:
自然の景観の中で暮らし、生態系に頼って生きる人々の権利を認識し、尊重し、人間の幸福を改善すること。
野生生物との共存にかかっている圧力と損失を軽減し、負荷を停止させ、劣化の傾向を逆転させる。

野生生物に対する需要の削減:
政府当局、利害関係者、市民社会など、社会的な影響を持つ主要な主体と協力し、動物由来感染症の拡散とそのリスクを軽減する方法について、社会に広く周知すること。
その中で、違法、または持続可能ではない形で搾取された野生生物とその製品について、一般の認識を高め、需要を減らしていくこと。

全文:https://spaceforgiants.org/

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