2020年のアース・オーバーシュート・デーは8月22日 「地球の使いすぎ」前年より3週間遅い到来となったが、いまも続く使い過ぎの状態
2020/08/22
- この記事のポイント
- 国際シンクタンク「グローバル・フットプリント・ネットワーク(GFN)」は、2020年8月22日が、2020年の 「アース・オーバーシュート・デー」であると発表しました。これは世界の人々の消費量が、1年間に地球環境が生産できる自然資源の量を上回った日のこと。今年は新型コロナウイルスの影響を受けて、前年より3週間遅くなりました。8月22日以降、人類は地球の生態系サービスの「原資」に手を付けながら生活をしている状況です。
人間が生きていくうえで必要な、大気、水、食料、木材などは、すべて自然が与えてくれています。過去50年の間に、人間が使用する、土地や、電気やガスなどのエネルギー、水の量は急激に増えました。しかし、地球が持つ森や海の恵みを生み出す力や、二酸化炭素を取り込む力など、生産力には限界があります。いまや、地球の生産力よりも多く、速いスピードで、人間は自然の資源を利用し、また地球が吸収できるよりも多くの廃棄物を出しています。
このように、地球の生産できる範囲を超えて、人間が消費を続ければ、やがて地球の生産力は衰え、すべての生命に影響を及ぼします。この「地球の使い過ぎ」の状態が続けば、自然とその恵みも減少する致命的な悪循環が待っています。
地球の資源を使い切る日「アース・オーバーシュート・デー」
1年間に地球が生産できる量を、人間が使い尽くしてしまう日を「アース・オーバーシュート・デー」として、毎年、国際シンクタンクのグローバル・フットプリント・ネットワーク(GFN)が発表しています。
この人間による消費の量が、自然による供給量を上回り、「オーバーシュート」が始まったのは1970年代のことです。それ以来、人類は地球の生態系サービスの「原資」に手を付けながら「赤字状態」で生活をしていることになります。
つまり、アース・オーバーシュート・デー後に人類が使う自然資源はすべて、未来の世代が使う資源を前借りし、消費を続けていくことになります。
2020年は8月22日が、アース・オーバーシュート・デーです。昨年のアース・オーバーシュート・デーは7月29日でしたので、約3週間遅れての到来となりました。
2020年は、新型コロナウイルス感染防止のため、各国でロックダウンや外出自粛があり、日常の活動が低下し、二酸化炭素排出量の減少などにつながったことが理由です。これはリーマンショックの影響でアース・オーバーシュート・デーが遅くなった時(2009年)以上の日数となっています。
また、世界平均で人間が消費する自然資源の量は、地球が生産できる量を未だ60%も上回っています。
各国が消費する自然資源の割合をみると、中国、米国、インド、ロシア、に次ぎ、日本は5番目に多い国となっており、日本の消費が、世界の自然資源に与える影響は大きいこともわかります。
自然の危機とSDGs
「生物多様性と生態系サービスに関する政府間科学-政策プラットフォーム(IPBES)」の最新の調査結果によると、陸地の75%と海洋の66%は、人間の活動によって大きく変化しています。1700~2000年の間に湿地帯の約85%、また過去150年間にサンゴ礁の半分が失われました。野生生物の個体数は1970年と比較して約60%減少しており、生物多様性への脅威を取り除く行動をとらなければ、推計100万種が失われる可能性があります。
さらに、自然が失われ、気候が悪化すれば、災害や病気などが多発し、食料不足から貧困や飢餓が増え、人々の健康で文化的な生活は崩壊します。
現在、生物多様性と生態系の悪化傾向は、貧困、飢餓、健康、水、都市、気候、海洋、陸域についてのSDGs目標(目標1、2、3、6、11、13、14、15)のターゲットの80% (44のうち35)の達成を妨げると言われています。自然回復はSDGsの目標達成にも欠かせないのです。
回復への道筋
自然を回復させるためには、生息地の保全や野生生物の保護とともに、負荷を下げるために人間の生産・消費行動の見直しが必要です。
今年のオーバーシュート・デーは、ライフスタイルの見直しのひとつのヒントになるでしょう。
新型コロナウイルスの影響によって停滞した日本の経済活動を回復するにあたり、単に過去の生活に戻すのではなく、この機に地球温暖化を抑え、生物多様性の回復、国連のSDGs(持続可能な開発目標)の達成につながる新たな経済のしくみやライフスタイルに転換していく復興プラン「グリーン・リカバリー」が重要になります。
地球の生態系の限界を超えた消費を人類が続けてゆけば、現在のような生活は、いずれ維持できなくなります。しかし、そのような未来を変え、自然との共生を実現していく余地が残されており、まさに今、私たちはコロナ禍でその変革の渦中にいます。
WWFは地球1.6個分の生活から1個分をめざして、政策決定者やビジネス界の意思決定者たちをはじめ、あらゆる人々が地球の恵みを持続可能な形で利用していく社会の実現に向けて行動できるよう働きかけていきます。