【第3部:費用算定編】 第4章 費用算定のまとめ
2013/05/09
ここでは、以上の費用計算についてとりまとめ、GDPに対する割合を検討した。
1)WWFシナリオの各種費用の合計
WWFシナリオの費用を、省エネルギーと自然エネルギーについてまとめると表4.1のようになった。
2010年から2050年までの40年間の設備投資は、省エネルギーに210兆円、自然エネルギーに232兆円、合計で442兆円であり、運転費用は省エネルギー−398兆円、自然エネルギーが−275兆円、合計で−673兆円である。
正味費用は省エネルギー−188兆円、自然エネルギー−43兆円、合計−232兆円となった。省エネルギーの導入がきわめて有効であることを示している。
上記の計算における太陽光と風力発電の費用については、純粋電力の部分のみを詳細に計算したが、燃料用電力の供給には、ほぼ同量の太陽光と風力発電が必要であり、この部分を加えている。
設備投資金額に対する正味費用の割合は、投資の有効性を示しており、省エネルギーで−90%、自然エネルギーで−19%となっている。化石燃料の価格が増大していくとき、ここでも、省エネルギーの導入がきわめて有効であることを示している。
図4.1および図4.2は、それぞれ省エネルギーおよび自然エネルギー分野での40年間の設備投資額を、対策・技術やエネルギー源ごとにまとめている。省エネルギー分野では、乗用車の切り替えが最も大きな投資を要し、続いて、住宅の断熱化、産業の省エネに大きな投資が必要であることがわかる。自然エネルギーについては、太陽光が圧倒的に大きな投資を要していることがわかる。
2010~2050年における省エネルギーと自然エネルギーの合計費用を、1年間の平均値としてまとめると表4.2および図4.3のようになる。設備投資は年間11兆円、運転費用は−17兆円、正味費用は−6兆円になっている。
2)GDPに対する割合
WWFシナリオではBAUシナリオと同様に、GDPは2008年の544兆円から2050年の851兆円に1.56倍に増大する。40年間の平均GDPは697兆円であり、エネルギー設備投資は40年間で442兆円、1年間に平均11兆円となり、これは40年間の平均の年間GDPに対して1.6%に相当する。
表4.3には、40年間の各年における各費用のGDPに対する割合を示している。
GDPに対するそれぞれの費用の割合は、図4.4に示すように、設備投資がほぼ毎年一定であるのに対して、運転費用はマイナスで次第に減少してゆくことがわかる。そして、正味費用は2030年を過ぎるとマイナスに転じて減少してゆく。
本報告ではすべての最終用途の省エネルギーについて検討できなかったが、省エネルギ ーと自然エネルギーの年間費用の割合は、GDPのおおよそ2%程度と推定される。
つまり、WWFシナリオにおいては、毎年GDPの約1~2%程度の追加的な設備投資が 必要とされるが、省エネルギーや自然エネルギーの普及によって削減されるエネルギー費 用によって、2030年ごろからは正味では便益に転じる。さらに2050年に向かって運転費用 が大幅に減少していくことによって、正味では大きな便益をもたらすといえる。
脱炭素社会に向けたエネルギーシナリオ提案 <第三部 費用算定>
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第1章 | エネルギー価格と費用算定の方法 |
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1.1 エネルギー価格 1.2 将来の電力価格 1.3 費用算定の方法 1.4 費用算定の対象 |
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第2章 | 省エネルギーの費用 |
2.1 産業部門の省エネルギー費用 2.2 家庭部門の省エネルギー費用 2.3 業務部門の省エネルギー費用 2.4 運輸部門の省エネルギー費用 |
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第3章 | 自然エネルギーの費用算定 |
3.1 太陽光発電の費用 3.2 風力発電の費用 3.3 地熱発電の費用 3.4 水力発電の費用 3.5 太陽熱の費用 3.6 バイオマスの費用 |
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第4章 | 費用算定のまとめ |