政府が温暖化対策に関する長期戦略を国連に提出
2019/06/26
政府が地球温暖化対策に関する長期戦略を国連に提出
2019年6月26日、日本の地球温暖化対策に関する長期戦略「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略(以下、「長期戦略」)」が国連に提出されました。
地球温暖化対策を国際的に進めるための条約「パリ協定」は、各国に対し、2050年という長期にむけて、どのように温暖化対策を計画・遂行していくかを記した「長期戦略」を2020年までに提出することを求めています。
日本政府は、2019年6月28日、29日に日本で初めて開催される「G20大阪サミット」前の発表を目指し、長期戦略の策定を進めてきました。
2019年4月2日には、有識者が集う「パリ協定長期成長戦略懇談会」が、長期戦略への提言をとりまとめて政府に提出。これを受け、4月23日、政府としての長期戦略案が発表されました。その後、約3週間という短いパブリックコメントの期間を経て、2019年6月11日、長期戦略が閣議決定されたのです。
長期戦略に残った数々の課題
2019年4月26日、WWFジャパンは、政府の長期戦略案に対し、10のポイントについて独自の提言を発表し、パブリックコメントも提出しました。
しかし、決定された長期戦略には、今世紀後半のできるだけ早期に「脱炭素社会」を実現するビジョンは明示されているものの、いまだ多くの課題が残されています。なかでも、脱炭素達成の手段として、まだ実現していない技術の将来的な革新(非連続的イノベーション)を重視する一方で、すでにある技術や対策によって直近でできることを軽視している姿勢が変わっていないことは問題です。
太陽光や風力など、技術が確立している再生可能エネルギーの導入を後押しするような、意欲的な導入目標も明示されていません。
WWFインターナショナルが声明を発表
今回、国連に提出された日本の長期戦略に対し、WWFインターナショナルが、声明を発表しました。
この声明で、WWFインターナショナルの気候・エネルギープラクティスリーダーであるマヌエル・プルガル・ビダルは、IPCCの1.5度報告書が示した深刻なリスクに触れ、日本が2050年に向けた長期戦略においても、石炭からの脱却に踏み込んでいない点を大きく問題視し、日本は石炭火力発電に関する計画を再考すべきだと指摘しています。
また、脱炭素化を明記したことを評価すると同時に、脱炭素化につながる日本の2030年に向けた排出削減目標を見直すことを強く促しました。2019年9月にアメリカ・ニューヨーク市で開催される国連気候変動サミットの場で発表することを求めています。
まもなくG20大阪サミットが開催。そして、いよいよ2020年に、パリ協定は実施段階へと入ります。日本は、世界を脱炭素化に導くリーダーシップを示すことができるのか。そのためには、世界の潮流を踏まえ、もう一歩踏み込んだ大きな決断が必要です。