持続可能な天然ゴムのためのグローバルプラットフォーム 第1回総会開催
2019/03/22
天然ゴム生産現場での課題
タイヤなどの原料として、世界中で広く使用されている天然ゴム。
その原料は、植林されたゴムノキから採取される樹液から作られています。
ゴムノキが育つのは、東南アジアなどの熱帯地域。しかし、こうしたゴム農園を擁した生産地は、今もほぼ手付かずの森が残る、貴重な場所でもあります。
こうした森は、トラやアジアゾウなど、希少な野生生物にとっても、残り少ない貴重な生息地であると同時に、未知の動植物が今後さらに発見される可能性もある、大規模な調査も行なわれてこなかった地域でもあります。
そうした自然環境が今、ゴム農園の開発などにより急激に失われる事態が、インドシナ半島をはじめとする、東南アジアの各地で生じています。
特にこの地域では、内戦などの政治的な混乱が収束に向かいつつある一方、経済発展が一気に進み、それに伴って起きている過剰な開発と自然破壊が、大きな問題となっています。
「持続可能な天然ゴムのためのグローバルプラットフォーム」の設立
これを解決する方法として、森林保全や野生生物の保護、地域住民や労働者の権利にも配慮した方法で、天然ゴムの生産を行ない、持続可能性を高めていく取り組みが広がっています。
そして、立場の異なる多くの企業やNGO(非政府組織)が議論を重ね、2018年10月、取り組みの新たな「枠組み」として、「持続可能な天然ゴムのためのグローバルプラットフォーム:GPSNR(Global Platform for Sustainable Natural Rubber)」が設立されたのです。
世界の天然ゴムの生産を、自然環境や地域社会に配慮した形で行ない、持続可能な天然ゴムの生産と利用を目指すこのプラットフォームには、天然ゴムの生産・加工に携わる企業、世界的なタイヤメーカーや自動車メーカー、NGOなどが参加。
2019年3月21日にシンガポールで開催された第1回総会までに加わった企業や団体などは、39にのぼりました。
また、このプラットフォームの設立を支援し、その後も、いつ、誰が、どのように意思決定を行なうのかといった詳細な議論に加わってきたWWFも、今回メンバーとして正式に参加を表明。同時に総会に次ぐ意思決定グループとなるエグゼクティブ・コミッティー(運営委員会)のメンバーとなることも決定しました。
今後に向けた期待と課題
今後のプラットフォームの具体的な活動内容としては、持続可能な天然ゴムの国際基準の策定や、天然ゴムのトレーサビリティの確立、生産の大部分を担う小規模な生産者との連携・協力などが挙げられます。
特に、この取り組みを実現するためには、天然ゴムを利用する企業側と、現場で実際に天然ゴムの生産に携わる、小規模な生産者との連携が欠かせません。
世界の天然ゴムは現状、生産の大部分を、企業などが所有する大規模な農園(プランテーション)ではなく、小規模な農家に頼っています。その数は、タイ、インドネシア、ベトナム、中国などの主要な生産地である東南アジアを中心に、約600万にのぼるとされています。
この、天然ゴムのサプライチェーンの最上流に位置する小規模農家から、プラットフォームへの参加が、現時点ではごく限られている点は、この取り組みにおける大きな課題の一つです。
さらに、上記の国々に加え、ミャンマーやカンボジアなど、今後見込まれる天然ゴムの需要の増加に伴い、ゴム農園が拡大しようとしている新しい生産地では、小規模農家が抱える経済的な貧困や、ゴム生産の知識や経験の不足、それによる生産の不効率や自然破壊といった問題も生じています。
こうした問題に今後、プラットフォームに参加する主体が、どのように取り組み解決を目指していくのかも、大きなポイントと言えるでしょう。
WWFはこれまでに、もインドネシアやミャンマーなどの、天然ゴム生産地で、森林の保全と持続可能なゴム生産を目指すプロジェクトを実施してきました。
今後は、こうした現場への支援を継続する一方で、プラットフォームを通じた国際的な天然ゴムの持続可能な生産と利用が、さらに拡大・加速してゆくよう、日本の企業にも参加を呼びかけ、取り組みを続けてゆきます。