【COP21】2015年 気候変動をくいとめる新しい国際枠組みの合意へ向けて
2015/05/14
京都議定書が発効(国際法として効力を持つこと)した2005年。京都議定書の第1約束期間の終了後にあたる、2013年以降の国際的な気候変動対策についての交渉が始まりました。しかし、目指されていた2009年のCOP15・COP/MOP5での合意は、さまざまな利害対立に阻まれ失敗。2011年に成立したCOP17・COP/MOP7のダーバン合意のもと、再び2015年の合意をめざした交渉が始まります。2015年12月のフランス・パリでのCOP21において、気候変動をくいとめるために、世界がめざしてる新しい国際枠組みの合意に向けた軌跡を説明します。
実現を見なかったコペンハーゲン合意
2007年にインドネシアのバリで開催されたCOP13・COP/MOP3(国連気候変動枠組条約第13回締約国会議・京都議定書第3回締約国会議)では、バリ行動計画が採択され、2009年の会議までに2013年以降の国際枠組みについて合意が目指されることになりました。
この間の国際交渉での主な対立点は、先進国と途上国の間での意見の相違でした。
一方では、先進国は、京都議定書採択当時と違い、新興国と呼ばれる中国やインドなどの国々の排出量が経済成長とともに急激に増加していることを踏まえ、新しい枠組みではそうした途上国は先進国と同等かそれに近い削減義務を負うべきであると主張しました。
他方で、途上国は、京都議定書体制からのアメリカの脱退のように、先進国はまだ必ずしも率先して責任を果たしていない(排出量をきちんと減らせていない)ことを問題にし、それにもかかわらず、途上国に責任を押し付けるべきではないと主張しました。
この対立は、「削減義務を負った先進国と負っていない途上国」という構造を持つ京都議定書の第1約束期間の形式をそのまま継続するのか、それとも別の新しい国際条約を作るのかという対立にもつながっていきました。
合意が目指された2009年のデンマーク・コペンハーゲンでのCOP15・COP/MOP6は、大きな注目を集め、通常は環境担当の大臣までしか参加しない会議に、各国の首脳クラスが軒並み参加するというハイレベルな会議となりました。
しかし、そのような会議にもかかわらず、先進国と途上国の対立をはじめとするさまざまな利害対立の溝を埋めることができず、新しい国際枠組みに合意することができませんでした。
「コペンハーゲン合意」という名の合意はいちおうは作られましたが、正式な「採択」ではなく「留意する」という異例の形式での扱いとなりました。
交渉の再スタート
コペンハーゲンでの合意に照準を合わせて交渉をしてきた各国にとって、2013年以降の新しい国際枠組み設立に合意できなかったことへの落胆は大きく、一部では国際的な枠組みの意義そのものに対しても疑念が呈されるほどでした。
しかし、合意ができなかったとはいえ、コペンハーゲン合意に向けて、アメリカ、EU、中国、インドなどの重要国を含めた多くの国々は、2020年に向けての温室効果ガス排出量削減目標や行動計画を準備していました。
そこで、2010年にメキシコのカンクンで開かれたCOP16・COP/MOP6では「カンクン合意」が交わされ、それらを自主的な約束として登録し、国際的なレビューを2年毎に行なっていくという仕組みが作られました。
これにより、2013年~2020年の間は、カンクン合意に下での自主的な目標のレビューを中心とする体制が整えられることになったのです。
この間、途上国グループは、あくまで京都議定書の継続、具体的には、京都議定書での第2約束期間において、先進国が引き続き義務的な削減目標を持つことを主張し続けました。
アメリカや日本などは、こうした主張を拒否しましたが、EUがこれを受け入れたことによって、途上国側も妥協をし、2011年に南アフリカ・ダーバンで開催されたCOP17・COP/MOP7では、「ダーバン合意」が採択され、2015年までに、2020年以降の新しい国際枠組みを作ることが合意されました。
2009年のCOP15・COP/MOP5でつまづいた国際交渉は、新たな期限を設定して再スタートすることになったのです。
2015年合意を目指して
COP17・COP/MOP7のダーバン合意によって、新しい交渉の舞台として、ダーバン・プラットフォーム特別作業部会(ADP)が設立されました。
ADPでは、主に2つの内容が議論されています。
1つは、2015年末に合意する予定の新しい国際枠組みの中身についての議論です。どのような目標を各国がかかげるべきなのか、資金や技術支援の仕組みはどのように作るべきなのか、温暖化の影響に対する適応対策を進めるための国際的体制をどのように設計するのかなど、様々な論点が議論・交渉されています。
もう1つは、上記のカンクン合意の下で各国が自主的に掲げている削減目標・行動計画の底上げです。
各国が自主的に掲げている目標は、それらを全部足し合わせたとしても、国際的な合意である「世界の平気気温上昇を産業革命前と比較して2度未満に抑える」という目標には大幅に足りていないことがわかっています。
この不足分(ギャップ)を埋めるために、どのような追加対策を行っていけるかの議論が引き続き行なわれています。
単純化していえば、前者が2020年以降に関する議論、後者が2020年までの取り組みに関する議論といえます。
2013~2014年の間にはIPCCの第5次評価報告書も発表され、気候変動の深刻化が改めて科学によって確認されました。
2015年における国際合意の成立は、この気候変動の深刻化をくい止めるためには、必要不可欠なものです。
日本も、この国際的な取り組みの中で積極的な役割を果たすことが期待されています。