トラの森に潜む罠
2017/08/18
20世紀初頭、10万頭が生息していたといわれるトラ。
現在の推定個体数は3,200頭ほど(成獣のみ)とされており、各地で絶滅が心配されています。
トラを脅かす主な原因は、すみかの森の消失と、骨などを狙った密猟。
特に密猟は、国際取引が禁止されているにもかかわらず続いている違法取引(密輸)に支えられ、大きな脅威となってきました。
さらにこの問題を助長しているのが、近年アジア各地の森で急増しているワイヤーロープを使った違法な「くくり罠」です。
自転車の部品でも作れるという簡易で恐ろしいこの罠により、トラはもちろん、ゾウやヒョウ、その他の草食動物など、さまざまな森の動物が犠牲になっています。
インドネシアのスマトラ島からは、森で回収されたくくり罠の数が、2006年から2014年までに2倍に増えた、という報告もありました。
森を守る現場のレンジャーたちは、罠の回収を必死に行なっていますが、資金や人手が不足している地域も少なくありません。
スマトラのリンバン・バリンの森では、正規の政府職員2人を含む、地域の人たちによるわずか26人のレンジャーが、1,400平方キロ(沖縄本島を上回る広さ)の森をパトロールしています。
違法な伐採などをくい止め、すみかの森が守れたとしても、こうした罠猟が横行すれば、成果も無駄になりかねません。
トラは近年、ロシアやインド、ネパールなどでは、わずかながらも個体数が増加。保護活動の成果が顕れ始めていますが、一方では、こうした新たな脅威となる問題も、大きくなっています。
木材や紙、パーム油、ゴムなどの産品を通じて、東南アジアの森林の現状に深くかかわっている国として、日本からも現地の取り組みを支援してゆかねばと思います。(広報担当 三間)