野生生物の危機を考える ~3月3日「世界野生生物 の日」に
2024/03/03
本日3月3日は、「世界野生生物の日(World Wildlife Day)」です。
これは、1973年のこの日、 「ワシントン条約」が採択されたことを受け、2013年に国連が定めた記念日です。
「ワシントン条約」は、野生動植物の国際取引を規制し、過剰な取引や密輸を防ぐための条約で、取引目的の密猟などを抑える要にもなっています。
条約の「附属書」と呼ばれるリストに掲載され、取引が規制されている野生生物の種数は、現在4万種あまり。
この数字を見るだけでも、過剰な利用や取引が、世界の野生生物を減少させる大きな原因になっていることが分かります。
ワシントン条約が誕生した20世紀後半の時代、野生生物を脅かしていた大きな原因は、密猟や過剰な捕獲、生息環境の破壊、そして外来生物の影響でした。
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現在もこれらが、野生生物の危機の大きな原因であることに変わりはありません。
しかし、この半世紀の間にもう一つ、野生生物を脅かす深刻な原因が指摘されるようになりました。
地球温暖化、すなわち気候変動による影響です。
IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストによれば、現在絶滅の危機にある世界の野生生物のうち、気候変動の影響を受けている種(しゅ)の数は、実に6,754種。
21世紀が始まった時点では、この数字は限りなくゼロでしたから、気候変動がこの20年あまりの間に、野生生物の危機として本当に深刻化してきたことがわかります。
昔は、密猟や乱獲を防ぎ、生息地の森や海を守ることが、野生生物を守る取り組みの中心でしたが、今では気候変動を食い止めるという活動もまた、その大事な要素になりました。
より広い視野をもって、より多くの人たちと協力を形にしながら、これからの野生生物の保全を目指していかねばと思います。
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私たちWWFジャパンでは今、インド、ブラジル、タンザニア各国のWWFの仲間たちと共に、それぞれ、ユキヒョウ、ジャガー、アフリカゾウの調査・保護活動に取り組んでいますが、こうしたフィールドでも、気候変動は大きな危機の要因になっています。ユキヒョウの生きる高山帯では生息に適した寒冷な環境が温暖になり、ジャガーの生きるアマゾンやパンタナールでは未曽有の干ばつが発生。アフリカゾウも干ばつによって、過去に見られなかった行動をするようになり、人との衝突事故が多発しています。WWFではたくさんの方々からのご支援のもと、こうした現場での課題に取り組みながら、国際的な規模での気候変動の防止にも力を入れています。