被災地・松川浦で初のエコツアーが開催されます


自然保護室の前川です。
干潟から突き出た白い筒、太さはちょうどストローくらいです。なんだか分かりますか?

ツバサゴカイと呼ばれるゴカイ(環形動物)の仲間の巣(=棲管:せいかん)です。まわりをよく見ると、離れた場所にもう1つ管があります。

実はこの2本は地中でUの字のように繋がっていて、ツバサゴカイの本体は管の奥に隠れているのです。

ツバサゴカイのような干潟に穴を掘って生息する生き物は、泥の中に水と酸素を送る役目も持っており、溜まった有機物の分解を促します。つまり、海の水をきれいにする、大きな役割を担っているのです。

この写真を撮影した場所は、私たちが「暮らしと自然の復興プロジェクト」を通じて支援を行なってきた福島県相馬市の松川浦です。

ここも津波の被災地ですが、さまざまな干潟の生きものが暮らしており、その生物多様性の豊かさは東北沿岸随一とも言われています。

このツバサゴカイも、実は熊本県や長崎県ではレッドリストの「絶滅危惧1A類」に指定されている絶滅危機種。それが松川浦では普通に見られます。ここに健全な干潟の環境が残されていることの証といえるでしょう。

今、松川浦では、松川浦を舞台として自然再生や生態系の役割を学ぶエコツーリズムの体制作りが進められています。

5月に相馬市で開催され、私も外部専門家として参加した環境省復興エコツーリズム推進事業検討会では、東北大学の鈴木孝男助教を講師に迎えたフィールド視察も行なわれ、地元旅館組合や市職員の皆さんと共に、松川浦の現状を視察するとともに、その特徴や干潟の役割についても学びました。

そうした取り組みの中で準備が進められてきた、震災後初となるエコツアーが、今年8月7日~8日、ついに開催されます。暮らしと自然の復興をめざした取り組みの一つとして、今後の展開に注目したいと思います。

 

松川浦

ツバサゴカイ棲管

ツバサゴカイ棲管ペア

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自然保護室(海洋水産 グループ長)
前川 聡

修士(動物学・北海道大学)
渡り性水鳥の全国調査および国際保全プログラムのコーディネーター業務、WWFサンゴ礁保護研究センター(沖縄県石垣島)での住民参加型の環境調査および普及啓発業務、海洋保護区の設定および管理状況の評価業務等に従事後、2011年より東日本大震災復興支援プロジェクトと水産エコラベルの普及および取得支援に携わる。養殖業成長産業化推進協議会委員。

日本各地の漁師町を訪ねては、持続的な養殖や漁業の推進のために関係者の方々と話し合いをしています。道すがら、普段はなかなか見ることができない風景や鳥を見つけては、一人ほくそえんでいます。もちろん、新鮮な魚介とお酒も! 健康診断の数値が気になるAround Fifty

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