知っているようで知らない「天然記念物」
2015/02/04
こんにちは、広報の佐久間です。突然ですが、天然記念物と聞いて、どんなものを思い浮かべますか?
天然記念物に指定されている動物には、例えばトキやコウノトリ、イリオモテヤマネコやオオサンショウウオなどがいます。
どれも絶滅の恐れがある生きもの...と思いきや、中には「富山県のホタルイカ群遊海面」なんて指定もあるんです。
ホタルイカは、ご存知のとおり、絶滅の恐れどころか日本各地で食用にされています。それなのになぜ天然記念物なのでしょう?
実は、天然記念物というのは、絶滅しそうな動植物を守るための法律ではなく、文化財を保存するための法律、「文化財保護法」によるものなんです。
保存すべきものが建物や仏像なら「文化財」となり、動物や植物や自然環境なら「天然記念物」となります。
富山湾のホタルイカは、青い光を放って群れで泳ぐさまが美しく、日本の春を代表する風景だという理由で、「ホタルイカが群れになって泳ぐ海面」が天然記念物に指定されているとのこと。
もし指定されているのが「ホタルイカ」だったら、食べるなんてもってのほか、殺したり傷つけたりすることも禁止です。
でも、「ホタルイカが泳ぐ海面」となると、ホタルイカそのものは食べてもOK、ということになるんだそうです。なんだかわかりにくいですね。
一方、絶滅しそうな野生動物を保護するための法律は別にあります。「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」、略して「種の保存法」です。
ただ、種の保存法には、足りない部分がたくさんあります。その一つが、対象となる動植物がとても少ないこと。
環境省は、絶滅のおそれがある動植物として3597種の名前を挙げていますが、種の保存法によって守るべき対象とされているのは、そのうち約90種、わずか2.5%にすぎません。
WWFは、種の保存法がもっと効果的なものになるよう、改善を求めてきました。
その甲斐もあり、2013年6月に成立した改正法の付帯決議や国会答弁では、「2020年までに300種を新規指定することを目指す」ことが約束されました。
いよいよホタルイカも指定されるのか!?というのは冗談ですが、この「種の保存法」が、多様な生きものの暮らす日本の自然を守るために、もっと力を発揮する法律になるよう、これからも動向をしっかり見ていきたいと思います。