1万キロをひとっ飛び!驚くべき地球の旅人オオソリハシシギ


自然保護室の安村です。
もうすぐシルバーウィーク、海外に行く方もいらっしゃるかと思います。

飛行機を使わず、ご自分の足で海外旅行に行かれる、という方はさすがにおられないと思いますが、自然界にはそんな驚くべき旅をする旅人がいます。

この時期、1万キロ以上の距離を自分の力で飛ぶ、オオソリハシシギです。

毎年9月終わり頃、繁殖地のアラスカを飛び立つオオソリハシシギの群は、赤道を越え、越冬地のニュージーランドやオーストラリアまで、時に一週間、無着陸で飛び続けます。

アラスカを飛び立つオオソリハシシギの渡りルート

何万年も続けられてきた、壮大な地球規模の「渡り」。

この過酷な旅には、その年の夏に生まれた若鳥たちも、親と別れ、若鳥だけの群を作って挑みます。

まだ一度も越冬地を見たことのない若鳥たちが、どうやって行き先を知り、旅を続けるのか。その本能、生態には本当に驚かされます。

これから始まる長い旅を、無事に終えたオオソリハシシギたちには、来春、私たちも会うことができるかもしれません。

オオソリハシシギのヒナ。3~4カ月で南半球をめざし飛び立ちます。

春、この鳥たちは秋とは別のルート、すなわち日本の沿岸や黄海の干潟を経由する航路をたどり、再び北の繁殖地を目指すからです。

そして、繁殖に備えるため、十分に休息し、たっぷりと食物を食べることのできる日本や黄海の干潟は、彼らにとって繁殖地と同じくらい大切な環境になっています。

しかし、シギ・チドリ類の中継地として、東アジアで最も重要な黄海の干潟は、今深刻な危機に瀕しています。

オオソリハシシギをはじめとする渡り鳥の保護には、国境を越えた国際的な協力が欠かせません。

こうした問題や取り組みに、そして何よりも、小さな地球の旅人たちに、ぜひ皆さまにも目を向けていただければと思います。

オオソリハシシギの成鳥。夏羽は赤く色づく

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自然保護室長(淡水・リーダー開発・PSP)
安村 茂樹

修士(生物化学・早稲田大学)
サンゴ礁センター駐在時に地域住民主体の環境調査を立ち上げ(現在も石垣島、久米島で継続中)。南西諸島域にて、多分野の研究者と協働した野生生物有害化学物質汚染調査、生物多様性評価調査を指揮。GIS手法を用いた保全重要域図は生物多様性条約で示されたEBSAに、野外調査ではオキナワトゲネズミ再発見や久米島沖のサンゴ大群集発見に寄与。UNEP/GEF黄海プロジェクトと連携した日中韓湿地保全活動をリードし、2020年より緊急支援や淡水・教育活動に関わる部門を統括。

沖縄のサンゴ礁と森、中国・韓国の干潟の保全に従事。国際会議でサイドイベント主催やロビー活動をする機会をいただきました。国際、環境、NGO-この3ワードが合わさるWWFで、何をすべきか考え、その仕事の醍醐味を実感し、行動する。そんな機会を一人でも多くのスタッフに提供したいです。晴れの日に気が向いたら、自転車で通勤し、休みは、川でカヌー漕いでいます。

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WWFは100カ国以上で活動している
環境保全団体です。

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