1万キロをひとっ飛び!驚くべき地球の旅人オオソリハシシギ
2015/09/10
自然保護室の安村です。
もうすぐシルバーウィーク、海外に行く方もいらっしゃるかと思います。
飛行機を使わず、ご自分の足で海外旅行に行かれる、という方はさすがにおられないと思いますが、自然界にはそんな驚くべき旅をする旅人がいます。
この時期、1万キロ以上の距離を自分の力で飛ぶ、オオソリハシシギです。
毎年9月終わり頃、繁殖地のアラスカを飛び立つオオソリハシシギの群は、赤道を越え、越冬地のニュージーランドやオーストラリアまで、時に一週間、無着陸で飛び続けます。
何万年も続けられてきた、壮大な地球規模の「渡り」。
この過酷な旅には、その年の夏に生まれた若鳥たちも、親と別れ、若鳥だけの群を作って挑みます。
まだ一度も越冬地を見たことのない若鳥たちが、どうやって行き先を知り、旅を続けるのか。その本能、生態には本当に驚かされます。
これから始まる長い旅を、無事に終えたオオソリハシシギたちには、来春、私たちも会うことができるかもしれません。
春、この鳥たちは秋とは別のルート、すなわち日本の沿岸や黄海の干潟を経由する航路をたどり、再び北の繁殖地を目指すからです。
そして、繁殖に備えるため、十分に休息し、たっぷりと食物を食べることのできる日本や黄海の干潟は、彼らにとって繁殖地と同じくらい大切な環境になっています。
しかし、シギ・チドリ類の中継地として、東アジアで最も重要な黄海の干潟は、今深刻な危機に瀕しています。
オオソリハシシギをはじめとする渡り鳥の保護には、国境を越えた国際的な協力が欠かせません。
こうした問題や取り組みに、そして何よりも、小さな地球の旅人たちに、ぜひ皆さまにも目を向けていただければと思います。