©WWFジャパン

イギリス政府、2050年温室効果ガス実質ゼロ目標を発表!


産業革命の発祥地イギリスが、石油や石炭など化石燃料からの卒業でも世界に歴史を刻みました!

イギリス政府は2019年6月12日に、「2050年に温室効果ガス排出量を実質ゼロにする」目標を打ち出しました。イギリスはすでに気候変動法を制定しているので、その改正で済む、ということで、この目標は法的拘束力を持つことになります。

今年5月、同政府の独立諮問機関である気候変動委員会(CCC)がこの提案を出した時、すごい!と思いつつも私は半信半疑でした。

でも、問い合わせたWWFイギリスの同僚たちからは「十分可能性がある。政府は今真剣に検討している」との返事が。それから程なくして、正式に政府の法的拘束力を持つ目標とされることが決まったのです!

大きな決断をしたイギリス。まもなく政権を去るメイ首相は、世界の将来世代に最大の置き土産を遺すことになりました。
©WWFジャパン

大きな決断をしたイギリス。まもなく政権を去るメイ首相は、世界の将来世代に最大の置き土産を遺すことになりました。

この動きはイギリスにとどまりません。
デンマークやスウェーデンは既に2050年に実質ゼロを法定化。フィンランドに至っては2035年実質ゼロの目標を掲げました!

フランスも同じく法制化を予定しており、ドイツも重い腰を上げて検討を開始。
その他フィジーやマーシャル諸島は当然のこと、温暖化対策に否定的なトランプ大統領のアメリカでも、カリフォルニアやハワイの州政府も2045年に実質ゼロ目標を表明しています。

©Don MacMillan

きっかけになったのは、2018年10月にIPCC(気候変動に関する政府間パネル)が発表した、「産業革命前と比較し、地球の平均気温が1.5度上昇した場合」の影響を示した特別報告書でした。

以来、世界各国は気温の上昇を「2度未満に抑える」というそれまでの目標から「1.5度」を目指す対策を、強く意識するようになったのです。

昨年末の国連会議COP24。ここでも「1.5度」に向けた勢いを感じました。しかし、これほど早く欧州勢が動いてくるとはとっても嬉しい驚きでした!
©WWFジャパン

昨年末の国連会議COP24。ここでも「1.5度」に向けた勢いを感じました。しかし、これほど早く欧州勢が動いてくるとはとっても嬉しい驚きでした!

翻って日本では、先日ようやく気候変動対策の長期戦略が閣議決定されたものの、脱炭素社会を実現する期限は明記されておらず、その道筋も具体性に乏しい内容です。

欧州諸国に並ぶような覚悟を持てるのか。今、日本は問われています。

この記事をシェアする

専門ディレクター(環境・エネルギー)
小西 雅子

博士(公共政策学・法政大)。米ハーバード大修士課程修了。気象予報士。昭和女子大学特命教授、京都大学院特任教授兼務。
中部日本放送アナウンサーなどを経て、2005 年に国際 NGO の WWF ジャパンへ。専門は国連における気候変動国際交渉及び国内外の環境・エネルギー政策。2002 年国際気象フェスティバル「気象キャスターグランプリ」受賞。環境省中央環境審議会委員なども務めている。著書『地球温暖化を解決したい―エネルギーをどう選ぶ?』(岩波書店 2021)など多数。

世界197か国が温暖化対策を実施する!と決意して2015年に国連で合意された「パリ協定」の成立には感動しました!今や温暖化対策の担い手は各国政府だけではなく、企業や自治体・投資家・それに市民です。「変わる世の中」を応援することが好きな小西です♪

人と自然が調和して
生きられる未来を目指して

WWFは100カ国以上で活動している
環境保全団体です。

PAGE TOP