本日、7月29日は「世界トラの日(world tiger day)」です


世界にトラが何種いるかご存知でしょうか?

シベリアトラやベンガルトラ、中には、スマトラトラ、インドシナトラといった名前を思い浮かべる方もいらっしゃるかもしれません。

ですが、実はトラは1種しかいません。

上の名前はいずれも「亜種」という、1種の動植物をさらに細かく分けた分類で、種としてはあくまでトラは1種です。

ですが、生息する地域などで分けられるこの亜種は、野生生物の保護を考える時、とても重要な視点になります。

最北にすむ亜種のシベリアトラ(アムールトラ)。寒いロシアの森にすみ、大きな身体に小さな耳、ふわふわの毛皮、といった特徴を持ちます。

たとえば、野生のトラは世界に約3,000頭とされていますが、生息地の全てに均等にいるわけではありません。

近年の調査では、ロシアやインドでは増えている一方、インドシナ諸国やスマトラでは森の消失と共に減少が懸念されています。

このまま行けば、トラという動物はロシアやインド以外の地域では絶滅してしまうかもしれない。それでは十分な保護とはいえません。

「亜種」の絶滅はまさに、特定の場所からその動物が完全に姿を消す事実を示すものなのです。

インドを中心に分布するベンガルトラなど熱帯や亜熱帯にすむトラの亜種は、毛足が短く、体躯も細く見えます。

現に、20世紀の100年間で、トラの9亜種のうち3亜種が絶滅してしまいました。

そんな中、トラの生息国の代表たちが2010年の7月29日、野生のトラを守り、その数を「倍にしよう」と宣言しました。

これはWWFなどの働きかけで1994年に発足した「グローバル・タイガー・フォーラム」という国際会議で宣言されたものです。

以来この日は、世界でトラの保護を考える「トラの日(world tiger day)」となりました。

絶滅してしまったジャワトラ。ジャワ島のみに生息する固有亜種でしたが、森林破壊と乱獲で1980年代に姿を消しました。

今、私たちがインドネシアやロシアの仲間たちと取り組んでいる活動現場にも、トラは生き残っています。

トラの森と日本の暮らしが確かに結びついていることを、今日この日、皆さんにもぜひ思い起こしていただければと思います。(広報担当 三間)

関連情報

極東ロシアの森でシベリアトラの足跡を調べるWWFロシアのスタッフ。自動カメラを使った調査から、密猟罠の回収、生息地の森の保全要請、保護されたトラのリハビリなど、取り組む活動は多岐にわたります。

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自然保護室(コンサベーションコミュニケーション グループ長)
三間 淳吉

学士(芸術学)。事務局でのボランティアを経て、1997年から広報スタッフとして活動に参加。国内外の環境問題と、保全活動の動向・変遷を追いつつ、各種出版物、ウェブサイト、SNSなどの編集や制作、運用管理を担当。これまで100種以上の世界の絶滅危惧種について記事を執筆。「人と自然のかかわり方」の探求は、ライフワークの一つ。

虫や鳥、魚たちの姿を追って45年。生きものの魅力に触れたことがきっかけで、気が付けばこの30年は、環境問題を追いかけていました。自然を壊すのは人。守ろうとするのも人。生きものたちの生きざまに学びながら、謙虚な気持ちで自然を未来に引き継いでいきたいと願っています。

人と自然が調和して
生きられる未来を目指して

WWFは100カ国以上で活動している
環境保全団体です。

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