エネルギー基本計画の閣議決定に際して


今日4月11日、エネルギー基本計画が閣議決定されました。
震災から3年の月日を経て、改定・策定された基本計画ですが、残念ながら、革新的な内容とはいえず、多くの問題を含んでいます。

同計画では、東京電力福島第一原発事故の反省をふまえてもなお、原発は「重要なベースロード電源」として位置づけられてしまう一方、これから、日本として伸ばしてくべき再生可能エネルギーの目標に関しては、定性的な表現が入っただけで、具体的な数値目標は明示されませんでした。化石燃料への依存から脱却していく方針もありません。

実は、ふだんから政策等の議論を追っている人間からすれば、同計画の文書の細部では、「ああ、中で頑張ってくれている人もいるのだな」と感じる表現も多々あります。細部では、昨年のバージョンから「改善」と呼べる箇所もあります。

再生エネの推進をする期間が今後3年だけでなく、それ以降にも伸びたこと。省エネに関して、今後、きちんとした基準を作ろうとしていること。温暖化対策について、国際貢献すれば日本国内の対策はしなくてもいいかのような表現が弱まったこと、などなど。

政策の分野では、よく「悪魔は細部に宿る」言われ、細部での変更が大事な時もあります。しかし、震災と原発事故以降、国民に対して、そして、国際社会に対して初めて示す「エネルギー基本計画」という歴史的局面においては、そのような細部の改善だけでは明らかに不十分です。

震災後、日本のエネルギーについて、「このままではいけないんだ」と多くの人が感じたのではないでしょうか。その思いに、今回の基本計画が応えることができているとは、どうしても思えません。 WWFジャパンとして、今後、実施していくべき7つのポイントをまとめました。基本計画の議論で、全てが決まったわけではありません。これからも引き続き、持続可能なエネルギー社会を目指して、提言を続けていきたいと思います(気候変動・エネルギー担当:山岸)。

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自然保護室長(気候エネルギー・海洋水産・生物多様性・金融)
山岸 尚之

立命館大学国際関係学部に入学した1997年にCOP3(国連気候変動枠組条約第3回締約国会議)が京都で開催されたことがきっかけで気候変動問題をめぐる国際政治に関心を持つようになる。2001年3月に同大学を卒業後、9月より米ボストン大学大学院にて、国際関係論・環境政策の修士プログラムに入学。2003年5月に同修士号を取得。卒業後、WWFジャパンの気候変動担当オフィサーとして、政策提言・キャンペーン活動に携わるほか、国連気候変動会議に毎年参加し、国際的な提言活動を担当。2020年より自然保護室長。

京都議定書が採択されたときに、当地で学生だったことがきっかけでこの分野に関心をもち、大学院を経てWWFに。以来、気候変動(地球温暖化)という地球規模の問題の中で、NGOがどんな役割を果たせるのか、試行錯誤を重ねています。WWFの国際チームの中でやる仕事は、大変ですがやりがいを感じています。

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環境保全団体です。

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