生きるってくさい ―チリの海で気づくこと―(食事中の方はご注意ください)
2017/03/01
三寒四温が始まり春の気配ですね。普及啓発教育担当の松浦です。
先日、チリ南部の集落ラウルマリンバルマセーダ(Raul Marin Balmaceda)を訪れました。
この集落の沿岸にはたくさんの生きものが棲んでおり、WWFチリと地域の住民たちとが協力して海の自然を守る活動を進めています。
早速、ボートで海に出ることに。
「あれはミナミオオセグロカモメだ」
「ほら、あっちにマゼランウ」
「あ、チリイルカ」
「あそこにマゼランペンギン!」
外海に向かうボートの上からキョロキョロとあたりを見渡すとたくさんの生きものたちが生活していることを確認できます。
フィヨルドを抜け外海に出るとボートの揺れは大きくなり、少し船酔いかも...と思いだしたときでした。
!!・・・くさい・・・!!
今まで嗅いだことのない鼻の奥に直接何か突っ込まれたかのような強烈なニオイ。揺れと相まって船酔いが加速し涙目になりながら顔を上げた数十m先に見えたのはオタリアの群れでした。
水族館好きでバックヤードツアーに参加しては、その場の匂いに「くさい...」なんて思っていた自分を殴りたい。あんなのくさいうちに入らない!
「野生で生きるってくさいーーー!!!」
彼らが生きる磯や岩礁そのものや食べ散らかし腐ってしまった魚など彼らの生活が放つ「ニオイ」は彼らの姿よりもずっと強烈に私を刺激したのでした。
私の鼻を駆け巡った強烈なニオイは、本来自然の中に存在するもの。自然で育まれている命の証と言ってもよいでしょう。
しかし、人間はそのニオイをなるべく消して生活しています。結果、自分たちの命を支えている自然の存在を忘れてしまいがちなのかもしれません。
命の証を「鼻から」納得したあの日を、忘れないでいたいと思います。