ミルクとワインとクリーンエネルギーの町!葛巻町へ


温暖化担当の小西です。
先日、岩手県の葛巻町へ行ってきました。ここは、自然エネルギーで地域興しを成功させた、全国的にも有名な町です。

今回は特に鈴木重男町長からお誘いをいただき、葛巻の風力発電所とバイオガス施設を視察し、意見交換をさせていただきました。

丘の上の白い風車と、高原の牧場の緑。平和でのどかで未来感のある、とても美しい風景が広がっていました。

風力発電が高原の牧場と共存しているには訳があります。風が強い場所は得てして山の上。しかし、人の入れない山奥には、巨大な風車の部品を運び上げるなど難しい相談です。

その点、牧場は道路もあり、地形も開けていて風車の建設が容易です。

それでも、風車を黒字で回し続けるのは大変な事。葛巻では第3セクターを通じて直接投資している事業と、民間企業が経営する事業の両方があり、試行錯誤しながらさまざまな面から取り組むことの重要さを改めて感じました。

もう一つ強く感じたのは、こうした風況がよく、自然豊かな場所の多くが、過疎化に直面した地域である、ということ。そのための対策も同時に考えてゆかなくてはいけない、ということです。

その点、葛巻はカリスマ的なリーダーシップを持つ町長が2代続いて、酪農の多角経営やワイン作り、そして自然エネルギーと、多角的な地域振興策を推進してきました。

地元の方々も熱意を持ち、町で使う電力の160%を風力で発電し、エネルギー全体の80%を自給。自然エネルギーの視察に町を訪れる人の数は年間55万人にのぼる(!)とのことです。

こうした地域の方々と一緒になって、振興と持続可能な資源の利用に取り組みながら、私たちも目標である「自然エネルギー100%の社会」の実現を目指してゆかなくては、と強く感じました。

 

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風力発電所は丘の上にある牧場と共存して建設されています。40mの風車の羽(ジャンボジェット機並み)の下では、たくさんの牛たちがのんびり草を食んでいます。

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今回の風力発電基の建設では、渡り鳥や猛禽類、希少生物の調査・対策などを十分行なったということです。今後の自然エネルギー事業の推進に欠かせない事前調査のあり方や対応について、大変参考になりました。

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「地方が、エネルギーや食料を都会に供給するだけでなく、都会から産業や人を呼べるような場として自立する」とお話しくださった鈴木町長。

 

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専門ディレクター(環境・エネルギー)
小西 雅子

博士(公共政策学・法政大)。米ハーバード大修士課程修了。気象予報士。昭和女子大学特命教授、京都大学院特任教授兼務。
中部日本放送アナウンサーなどを経て、2005 年に国際 NGO の WWF ジャパンへ。専門は国連における気候変動国際交渉及び国内外の環境・エネルギー政策。2002 年国際気象フェスティバル「気象キャスターグランプリ」受賞。環境省中央環境審議会委員なども務めている。著書『地球温暖化を解決したい―エネルギーをどう選ぶ?』(岩波書店 2021)など多数。

世界197か国が温暖化対策を実施する!と決意して2015年に国連で合意された「パリ協定」の成立には感動しました!今や温暖化対策の担い手は各国政府だけではなく、企業や自治体・投資家・それに市民です。「変わる世の中」を応援することが好きな小西です♪

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