ツキノワグマの息吹を感じる町で
2015/10/04
事務局長の筒井です。
町の97%が深い山林を占める島根県益田市匹見町。
去る9月20日、私たちが島根県と共同プロジェクトを実施しているこの町で、シンポジウム「もっと知ってもらいたい匹見とクマの実態」を開催しました。
過疎化と高齢化が急激に進むこの町では、集落に出没するツキノワグマが住民との軋轢を深めています。
そしてその最前線で、クマの保護管理に取り組む県職員のスタッフの方々は、出没時の緊急対応も辞さず、クマと人の共存に向けた取り組みを、日夜続けてこられました。
しかしそれでも、匹見町はクマが実際に出没し、被害を恐れる生活者の暮らしがある地域。
シンポジウムでも、「自然保護団体は他人の村に来て余計なことを言わないでくれ」、「クマを護る前に、住民を守るべきではないのか?」との声があがり、会場には緊張が走りました。
日本の森の豊かさを象徴するツキノワグマ。
一方で「クマは森の王者。それだけに恐ろしい」との意見も聞かれました。
そのような野生動物との共存に向けて、地域に理解と協力をいただき、合意を見出すことは容易ではありません。
県職員の方のお話では、クマはクリやカキは我慢しても、蜂蜜だけは絶対に諦めず、人里近くの樹木や、宅地の敷地内でさえも蜂の巣があるとやってきてしまうそうです。
実際、シンポジウムと同時に行なわれたフィールドツアーでは、蜂蜜欲しさに壊された民家の屋根や、スギの樹洞を見学し、森の住人たるクマの息吹を感じました。
シンポジウムの終了後には、出没対応に同行する機会にも恵まれましたが、通報後すぐ現場に駆けつける職員の方々の姿は、まさに信頼と安心を与えてくれるものでした。
最前線で注がれる、こうした皆さんの情熱に深く感銘を受けつつ、これからも抑止策の知見を集め、クマとの共存に向けた取り組みをお手伝いしたいと思います。