森よ、よみがえれ!植林後の困難を乗り越えて


自然保護室の川江です。
先日、WWFジャパンが支援するインドネシアのブキ・バリサン・セラタン国立公園に行ってきました。

今回、訪問した場所の1つに植林地があります。

ここでは、かつて地域の人々が違法な農園開拓を行なっていました。

そんな彼らと関係作りを一から始め、協力を得ることで今、国立公園内の水田やコーヒー農園の跡地に木を植えているのです。

成長した植林木

しかし、木はただ植えればいいというものではありません。

特に、森林を回復させるのが難しいのが、雑草が人の背丈よりも高く伸びる草地です。

木を覆って枯らせてしまうこの草、雨季には草刈りをしても1か月で元通りに伸び、乾季にこれが一面枯れると、火災のリスクが高くなります。

実は、今年3月の訪問時には、国立公園側の都合でこの植林地に入れなかったため、どうなっているのか非常に心配していました。

野生のゾウに踏み倒された植林木

そして今回、植林地に入ってみて、うれしい驚きがありました。
雑草に囲まれた厳しい状況の中で、植林木がしっかり成長していたのです!

私たちがここで支援を始めた2011年の植林開始からこれまで、数多くの難題がありました。

植林地が燃えてしまったり、森から出てきた野生のゾウに植林木を踏み倒されたり。

また、下草刈りが予定通りに進んでおらず、植林木が枯れた時には、現地のスタッフに厳しい言葉をかけたこともありました。

火災で焼失した植林地の植え直し

こうした困難に何度も直面するたびに、私自身、草地への植林は諦めた方がいいんじゃないかと思うこともありました。

それでも、現地のスタッフと地域の人々が我慢強く木を植え直し、手入れをしてくれたおかげ、ようやくここまで来ることができました。

大きく成長した植林木を見た時、現地のスタッフと地域の人たち、そして取り組みをいつも支えてくださっている日本の皆さんへの感謝の気持ちで、胸がいっぱいになりました。

これで植林の手入れが終わった訳ではありません。

まだまだ、植えた苗木よりも枯れた数の方が多い場所があります。

今年度は集中的に下草刈りをする計画ですので、より多くの植林木が大きく成長しくれることを願っています。

大きく育った植林木。これは疎林の植林地

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自然保護室長(森林・野生生物・マーケット・フード・コンサベーションコミュニケーション)、TRAFFICジャパンオフィス代表
川江 心一

京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科修士課程修了。
小学生の頃に子供向け科学雑誌の熱帯雨林特集に惹きつけられて以来30年間、夢は熱帯雨林保全に携わること。大学では、森林保全と地域住民の生計の両立を研究するため、インドネシアやラオスに長期滞在。前職でアフリカの農業開発などに携わった後、2013年にWWFに入局。WWFでは、長年の夢であった東南アジアの森林保全プロジェクトを担当し、その後持続可能な天然ゴムの生産・利用に関わる企業との対話も実施。2020年より現職。

小学生の頃に科学雑誌で読んだ熱帯雨林に惹きつけられると同時に、森林破壊のニュースを知り「なんとかしなきゃ!」と思う。以来、海外で熱帯林保全の仕事に携わるのが夢でしたが、大学では残念ながら森林学科に入れず・・。その後、紆余曲折を経て、30半ばにして目指す仕事にたどり着きました。今でもプロジェクトのフィールドに出ている時が一番楽しい。

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