山から土を運んでくる?ボルネオ島での植林活動


こんにちは、自然保護室の小林です。
先日、ボルネオ島の西カリマンタンへ行ってきました。

ボルネオ島には世界屈指の熱帯林が広がり、オランウータンをはじめゾウやサイ、ウンピョウといったたくさんの野生動物のすみかとなっています。

今回訪ねたのは、ある企業が伐採権を持つ森。 ここから切り出された木材は、合板やフローリング用の材として日本にも輸出されています。

この企業は、森を乱伐せずに利用しながら、伐採跡地では自然を回復させるため、ボルネオの代表的な樹種である、フタバガキ科の木の苗の植林を試みています。

伐採後に植林を行い、森林の状態を良いままで保つ努力をしています。

現場で私が一番驚いたことは、この植林地には、わざわざ山から運んできた土が混ぜられていたことです。

理由を聞いてみると、土の中にはフタバガキ科の木と共生する菌がいて、木の生長を助けているためだそうです。

この菌は、キノコの菌糸のように木の根を覆うことがあり、木から光合成による栄養をもらう一方で、木には無機養分を供給していると考えられています。

こうした「土運び」の他にも、挿し木をして苗木を育てるなど、現場ではさまざまな試行錯誤を重ねている様子が見られました。

挿し木で育てている苗木

伐採企業というと、利益のために豊かな森を皆伐したり、違法伐採を繰り返す印象がありますし、実際そのような問題も後を絶ちません。

しかし中には、森を自らの経営資源ととらえ、持続可能な利用に取り組み始めている企業も増え始めています。そのことを目の当たりにし、頼もしく感じた時間でした。

暮らしに欠かせない、木材や紙などの森林資源。それを供給する企業の姿勢や取り組みは、森を守る上で重要な意味を持ちます。こうした取り組みを、私たちも応援していきたいものです。

苗木ナーサリーを視察するWWFスタッフ

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自然保護室(淡水)
小林 俊介

修士(動物学・京都大学)
京都大学在学時にボルネオ島での野生動物の行動学を専攻。ボルネオの豊かな生物層の魅力を知るとともに農園開発などの環境課題の大きさを実感する。2013年にWWFに入局。ボルネオ島での絶滅危惧種保全、持続可能な森林・農園管理、ESDなどの活動を担当。2018年よりサンゴ礁保護研究センター長。サンゴ礁保護研究センターの地元移譲を経て2021年から現在まで淡水グループ繊維担当と、海洋グループ白保担当を兼務。

子供のころからの動物好きが高じて、東南アジアでの野生動物の研究に携わった後、WWFへ。森林、海洋、淡水と様々な分野を担当し、持続可能な資源管理を中心に海外・国内のフィールドにも携わってまいりました。フィールドで豊かな自然とそれを守るために頑張っている仲間たちと交流するのが何よりの楽しみです。

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