アサリを守ることは、渡り鳥を守ること!


自然保護室の安村です。
先日、九州の有明海に行ってきました。

同行したのは、東アジアを代表する大陸棚の海「黄海」の干潟で、持続可能なアサリの生産をめざしている、関係者の方々です。

訪問したのは、熊本県川口漁業協同組合。

ここで、日本を代表するアサリの資源回復の取り組みを伺いました。

日本にも飛来するシギ・チドリ類の一種、オバシギ。黄海の鴨緑江干潟には、毎年春に1万~3万羽が飛来します。

日本のアサリ生産量は、1970年代をピークに80年代から減少し、現在は年数万トン。

これに倍する国内の消費は、主に黄海からの輸入により支えられています。

川口漁協はこうしたアサリ資源の減少に危機感を抱き、熊本県や関係機関と一体となった、漁場環境の改善などを推進してきました。

このような取り組みは、沿岸の大切な漁場と共に、そこを毎年訪れるシギ・チドリなどの渡り鳥を守ることにもつながります。

有明海の夕暮。たくさんの渡り鳥が集まる、恵み豊かな海です。

特に、有明海は、日本国内で最大のシギ・チドリ類の渡来地。

そして、今回ご一緒した関係者の皆さんがアサリ生産に携わっている黄海の中国沿岸は、東アジア最大の渡来地で、鳥たちの渡る「空の道」により、互いに深くつながっています。

しかし黄海では、熊本県などでは条例で使用が禁止されている大型ポンプを使い、海水や土砂一緒にアサリを吸い上げて、年間100万トン以上が漁獲されているなど、自然への影響が懸念されています。

こうした資源の乱獲や配慮のない沿岸の開発は、地球を縦断する壮大な渡りを行なうシギ・チドリの空の道を断ち切り、その生存を脅かす大きな原因となるものです。 

私たちは今、環境に配慮したアサリ漁業を推進し、適切な資源管理を行なうことで、日本にも大きなかかわりのある、黄海沿岸の自然を守る取り組みを進めています。

有明海では、「じょれん」という漁具を使ってあさりを採ります。黄海では一部では使われていますが、現在は、ポンプ漁が主流になっています。

アサリという海の恵みと、地球の旅人である渡り鳥。
これを、国境を越えて守る活動を、皆さんもぜひご支援ください。

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自然保護室長(淡水・リーダー開発・PSP)
安村 茂樹

修士(生物化学・早稲田大学)
サンゴ礁センター駐在時に地域住民主体の環境調査を立ち上げ(現在も石垣島、久米島で継続中)。南西諸島域にて、多分野の研究者と協働した野生生物有害化学物質汚染調査、生物多様性評価調査を指揮。GIS手法を用いた保全重要域図は生物多様性条約で示されたEBSAに、野外調査ではオキナワトゲネズミ再発見や久米島沖のサンゴ大群集発見に寄与。UNEP/GEF黄海プロジェクトと連携した日中韓湿地保全活動をリードし、2020年より緊急支援や淡水・教育活動に関わる部門を統括。

沖縄のサンゴ礁と森、中国・韓国の干潟の保全に従事。国際会議でサイドイベント主催やロビー活動をする機会をいただきました。国際、環境、NGO-この3ワードが合わさるWWFで、何をすべきか考え、その仕事の醍醐味を実感し、行動する。そんな機会を一人でも多くのスタッフに提供したいです。晴れの日に気が向いたら、自転車で通勤し、休みは、川でカヌー漕いでいます。

人と自然が調和して
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WWFは100カ国以上で活動している
環境保全団体です。

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