持続可能なエビ養殖業実現にむけて インドネシア・ジャワ島のエビ養殖業がASC認証を取得 ~WWFジャパンとWWFインドネシア、日本生協連、現地企業が協働~
2024/04/18
公益財団法人世界自然保護基金ジャパン(東京都港区、会長:末吉竹二郎、以下 WWF ジャパン)は、WWFインドネシア、インドネシアのエビ加工会社、日本生活協同組合連合会(以下、日本生協連)と協働して、持続可能なエビ養殖業の実現にむけて「インドネシア エビ養殖業改善プロジェクト」を行なっています。このたび2024年3月29日(金)にジャワ島中部ジャワ州の取り組みにおいて、現地エビ加工会社のPT. MISAJA MITRA(以下、ミサヤミトラ社)がASC(Aquaculture Stewardship Council:水産養殖管理協議会)認証(以下、ASC認証)」を取得したことを発表します。
エビ(ブラックタイガー)は、日本の水産物消費を支える重要な魚介類の一つですが、消費の大部分を海外からの輸入に頼っており、その生産の持続可能性が大きな課題となっています。2022年の日本のエビ類輸入量で第3位の16%を占めるインドネシアでは、これまでにもブラックタイガーを生産する養殖池をつくるためにマングローブ林が伐採されるなど、自然環境に大きな影響を与えてきました。また近年、養殖池の管理が不十分なことなどから生産性が低下し、小規模零細の生産者の生計への影響も懸念されてきました。
そのためインドネシアのブラックタイガー養殖では、生物多様性が高く、地域の暮らしにとっても重要なマングローブ生態系をはじめとした自然環境の回復・保全を図るとともに、生産者が将来にわたって持続的に生計を立てていけるように転換していくことが求められています。
このような背景のもと、WWFジャパンとWWFインドネシアは、自然環境、労働者や地域社会に配慮した養殖業の国際認証であるASC認証の取得を目指し、インドネシアのエビ加工会社と同社からエビを調達する日本生協連と協議。2018年7月に、スラウェシ島南スラウェシ州でエビ養殖業改善プロジェクトを開始しました。2021年7月からは、ジャワ島中部ジャワ州にも取り組みを展開。養殖池の開発によって失われたマングローブの再生や、生産者への養殖池の水質のモニタリングをはじめとした研修などを実施してきました。この度ジャワ島中部ジャワ州の取り組みにおいて、現地エビ加工会社のミサヤミトラ社がASC認証の取得に至り、持続可能なブラックタイガー養殖業が実現しました。
WWFジャパン 自然保護室 海洋水産グループ 吉田誠のコメント
今回の養殖業改善プロジェクトを通じたASC認証の取得は、マングローブの再生をはじめとした自然環境の回復と保全、さらには生産性の改善を通じた生産者の生計向上にもつながる重要な成果です。ミサヤミトラ社と生産者の皆さんの現場での尽力はもちろんですが、現地からエビを調達する日本生協連の積極的な関与が、プロジェクトの前進と成果実現の大きな原動力となりました。WWFは引き続きミサヤミトラ社と日本生協連と協働し、インドネシアでの持続可能なブラックタイガー養殖業の拡大に向けて取り組んでいきます。
日本生活協同組合連合会 ブランド戦略本部 サステナビリティ戦略室(水産担当)松本哲氏のコメント
日本生協連は、ブラックタイガーを半世紀近くにわたり取り扱っています。コープ商品(PB)のエシカル消費への対応をすすめる中で、生協組合員(消費者)に品質のよい、おいしいエビ商品をお届けするだけではなく、原料エビの産地や生産に関わる人々に遡って、環境と社会に配慮した責任ある養殖業へ転換していくことが事業を未来へ継続する上でも大切と考え、プロジェクトに取り組みました。難しい課題もあり時間もかかりましたが、今回、ASC認証を初めて取得できたことは、プロジェクトで協働するWWFインドネシア、WWFジャパン、ミサヤミトラ社のみなさんの粘り強い努力や、多くの関係者の協力によるものです。心より感謝を申し上げます。
※ASC認証は、養殖が及ぼす周辺環境への負荷を軽減しながら、地域社会に配慮し、養殖業に携わる人々の権利を守る「責任ある養殖」を目指す仕組みです。世界的に信頼性の高い認証システムと評価されています。
ご参考
WWFジャパン活動報告記事「インドネシア ジャワ島のエビ養殖業がASC認証を取得!」(活動の背景や、ASC認証取得にむけた取り組みの詳細をご紹介しています。)
【WWFについて】
WWFは100カ国以上で活動している環境保全団体で、1961年にスイスで設立されました。人と自然が調和して生きられる未来をめざして、サステナブルな社会の実現を推し進めています。特に、失われつつある生物多様性の豊かさの回復や、地球温暖化防止のための脱炭素社会の実現に向けた活動を行なっています。