「ゴーストギア調査隊」発足――漁業由来の海洋プラスチックごみをダイバーが調査 静岡県西伊豆町を皮切りに、全国へ展開計画


公益財団法人世界自然保護基金ジャパン(東京都港区 会長:末吉竹二郎、以下WWFジャパン)は、2023年7月、ゴーストギア(漁業由来の海洋プラスチックごみ)をダイバーの力を借りて調査する取り組み「ゴーストギア調査隊」を発足し、昨日13日、最初の調査地域である静岡県西伊豆町とともに、同町の役場で記者発表を行ないました。ゴーストギア調査隊は、ダイバーが自治体、漁業者と協働して潜水調査を行ない、ゴーストギアの実態を把握して海洋汚染の解決を目指すプロジェクトです。西伊豆町を皮切りに、他自治体での展開を計画しています。

ゴーストギア調査隊について

WWFジャパンはゴーストギアについて、実態の把握と回収のプログラムを開始し、初年度(2023年7月~2024年6月)の実施地として、西伊豆町との覚書を締結しました。

プロジェクトの仕組みと流れ

  • 海洋プラスチックごみの一つであるゴーストギアについて、日本の沿岸域における実態を把握
  • ゴーストギアがもたらす問題点を明らかにし、その対策について、関係者、行政、専門家との協議会などを通じ、政策提言からゴーストギア問題の解決を目指す
  • 年間計4回の調査ダイビングを行い、ゴーストギアを中心に海底ごみの状況を調査予定
  • 発見されたゴーストギア・海底ごみは、伊豆漁業協同組合安良里支所の協力で回収
  • 回収物は西伊豆町が産廃処分を行い、回収・処分の費用には環境省の補助金を活用することを想定

概要
主催: 公財)世界自然保護基金ジャパン (WWFジャパン)
アドバイザー:コーラル・ネットワーク 事務局長 宮本育昌氏、国立環境研究所 生物多様性領域/領域長 山野博哉氏
実施母体:黄金崎ダイブセンター、特非)日本安全潜水教育協会
協力: 西伊豆町役場、伊豆漁業協同組合 安良里支所

ご参考:
海洋プラスチック問題への取り組み「ゴーストギア調査隊」活動開始(WWFジャパン記事)

コメント

 

WWFジャパン自然保護室長 山岸尚之のコメント

「ゴーストギアは海の中に存在するため、なかなかその実態をつかむことが難しいのが実情です。そのため、WWFジャパンはダイバーの方々に協力いただき、浅海域におけるゴーストギアの実態把握を目指し、本プロジェクトを立ち上げました。地域の自治体と漁業者のご協力も重要です。初めての試みの中、いくつかの候補地の中から西伊豆町の行政、漁業者、ダイバーの方々と協議し、共に取り組んでいただけることになりました。
レジ袋や容器包装のような海洋ブラスチックごみと比べ、漁業から発生するプラごみについては、まだ社会的な認知が進んでいません。富士箱根伊豆国立公園内に立地し、ユネスコ世界ジオパークにも認定されている西伊豆町が、「ゴーストギア調査隊」にご協力いただくことで、この問題への社会的な理解が進むことを期待しています。西伊豆町の持続可能な水産業、引いては町の発展にもつながるならば幸いです」

西伊豆町町長 星野淨晋氏のコメント

「西伊豆町は、漁業を主産業として海の恩恵を受けて栄えてきた港町です。また海と山に囲まれた町の現在の主産業は観光で、海の素晴らしい景観や海でのアクティビティの恩恵を受けて、我々は生活しています。そのため、海洋資源を大切にし、海の中をきれいにして後世に引き継ぎたいという思いがあります。
漁具は、天候等の理由でどうしても流出したり、回収できず放置されるものもあります。もし海の中にあるのであれば回収し、素晴らしい海を残していくことが漁業者と自治体の責務です。このたび、海への恩返しをしたい、環境保全にも力を入れたいと考え、WWFジャパンとの協定に行きつきました。持続可能な海漁、さまざまな海洋資源のために我々も頑張りたいと思います」

ゴーストギアの問題

海洋に流出する世界のプラスチックごみのうち、漁具は約1割*1を占め、毎年の流出量は64~115万トン*2に上ると報告されています。また、日本の海岸に漂着するごみのうち、重量ベースで4割*3近くが漁網やブイ、ロープなどの漁業で使われているプラスチックごみといわれます。流出したプラスチック製の網や仕掛けなどの漁具は「ゴーストギア」と呼ばれ、その丈夫さゆえに形状・機能を留めるため、海底に沈下してサンゴや藻場に覆い被さるなど海洋生態系に影響を与えたり、持ち主のいないまま魚などを獲り続けて漁業資源を減少させたりするなど漁業者にも被害をもたらし、持続的な水産業への脅威となります。漁業者にとって高価で大切な道具である漁具ですが、急な天候変化や岩礁への引っ掛かり、他の漁業者との接触などで流出を完全に防ぐことは難しいのが実情です。

出所:*1United Nations, the Ocean Conference Factsheet 2017, *2PEW Charitable Trusts, Breaking the Plastic Wave 2020、*3環境省、海洋ごみ実態把握調査のとりまとめについて2020

ご参考:
報告書『ゴーストギアの根絶に向けて~最も危険な海洋プラスチックごみ』(日本語版)を発表(WWFジャパン、2021年7月)
どうやって防ぐ? 海洋プラスチックごみ「ゴーストギア」 WWFと考える~SDGsの実践~【6】

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