日本の両生類ペット取引が脅威に 81%がワシントン条約の規制対象外と判明 ~11月の締約国会議に向け市場調査~
2022/03/24
野生生物のペット利用が生物多様性の脅威になっていることへの懸念が強まっているなか、公益財団法人世界自然保護基金ジャパン(東京都港区 会長:末吉竹二郎 以下、WWFジャパン)とその野生生物取引監視部門であるTRAFFICは、特に絶滅のリスクが高いグループである両生類の取引について調査を実施。今回、日本の両生類ペット取引に関する調査について、報告書『Illuminating Amphibians: the amphibian trade in Japan(タイトル和訳:日本の両生類取引)』(英語版のみ)にまとめ、本日、公開しました。
近年、「ペット」として取引される動物種の、ワシントン条約附属書への追加や規制内容の強化が増えていますが、両生類や爬虫類については規制が追い付いていないのが実情です。とりわけ両生類は、世界で存在が知られるおよそ8,000種の40%がすでに絶滅のおそれがあるとされますが、ワシントン条約の規制対象となっているのは2%あまり。無規制に行なわれる国際取引の影響が強く懸念されています。
こうした懸念から、2019年の同条約第18回締約国会議(CoP18)では、両生類の国際取引や保全状況を把握するための取り組みを条約事務局や締約国が協力して実施することが、正式に決定されました。
この国際的な動きを踏まえ、WWFジャパンとTRAFFICでは、両生類のペット取引の実態を把握するために2020年~2021年にかけて、最大の輸入国である米国と日本にフォーカスした2つの調査を実施。公式な統計が存在しない野生生物のペット利用について、オリジナル調査をもとに、実態を明らかにしました。2021年11月に米国の輸入統計に基づく種のリスク評価報告書を発表、そして今回、日本市場と日本原産種の取引調査に関する報告書を発表しました。
今回の調査報告書が明らかにした実態(詳細は「添付資料」の調査概要を参照)
- 日本は世界各地から生きた両生類を輸入し、輸入は増加傾向。日本のペット市場で国内外原産の様々な両生類が取引されるが、ワシントン条約の規制対象でない種が81%を占め、野生捕獲が個体数減少の要因となっている懸念があること。
- 絶滅のおそれがある種や、特に野生捕獲が脅威となっている可能性の高い種・分類群を特定した。
- 絶滅の懸念があるシリケンイモリをはじめ日本に生息する両生類もペット取引の脅威に晒されていること。
今年1月、環境省が日本に生息する絶滅の恐れがあるサンショウウオ26種を種の保存法の国内希少種に指定したことは、活発に行なわれる両生類のインターネット取引等への対策にもつながると言えます。
報告書では、調査結果を受けて次の3点を提言しています。WWFジャパンとTRAFFICでは、今年11月にパナマで開催されるワシントン条約CoP19に向け、関係国・機関に対策や対応を求めるとともに、日本国内の対策を後押していきます。
- 取引により影響を受けている可能性が高い種・分類群についてワシントン条約の取引規制や生息国での保全措置の導入を検討すること
- 「消費国」としての日本は、両生類を扱う事業者の法的管理の導入(動物愛護管理法)と、eコマースを含む事業者による自主的な調達の改善に取り組むこと
- 「原産国」としての日本は、シリケンイモリの附属書Ⅱ掲載ほか、取引の影響を受けている恐れがある種の国内法での保護、および海外取引状況のモニタリングの実施を検討すること
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