ウナギ 関連情報まとめ(2015年~2018年)


ウナギの不漁...東南アジアは大丈夫?(2018年2月5日)

ここ最近、二ホンウナギの稚魚(シラスウナギ)の不漁が話題になっています。
この不漁、実はウナギ養殖が広く行なわれている中国、韓国、台湾も同じ。
そこで心配になってくるのが、他のウナギ種への影響です。
ウナギの養殖は、天然の稚魚を獲ってきて養殖場で大きくするという手法をとっているため、稚魚が必要となります。
そして、東アジアの国・地域は、自国でこれを漁獲するだけでなく、ニホンウナギ以外のウナギの稚魚の輸入もしています。
そのため不漁の年には、輸入量が多くなる傾向に。2011年以降、特に東アジアへの輸入が増えているのが、東南アジアのウナギ種です。
東南アジアには数種のウナギが生息していますが、国によっては、漁獲統計すら存在しないこともあります。
どれくらい漁獲されているかもわからないまま利用を続け、気が付いたら獲れなくなっていた!という事態も生じ得るのです。
そこで、東南アジアでのウナギの利用状況を把握し、持続的な管理につなげることを目的に、2017年秋、東南アジア漁業開発センター(SEAFDEC)主導でウナギのプロジェクトがスタートしました。
先日タイで開かれた、その初めての会合には、東南アジアからは、フィリピンやインドネシアを含む8カ国の関係者が出席。WWFのスタッフもこれに参加しました。これまでまとまった資料がなかった各国の漁獲、養殖、取引に関する基本的な情報がまとめられており、持続的な利用への第一歩が踏み出される形になりました。
このプロジェクトを通じて、ウナギ管理への関心が低かった関係国の理解が深まりつつあるようです。
東南アジアで漁獲、養殖されるウナギも日本に輸入され消費されています。
まだまだ問題は山積みですが、東南アジアでも、ウナギ保全の取り組みが加速するよう期待しつつ、WWFも働きかけを行なっていきます。

北アフリカのウナギに黄信号!(2017年8月3日)

土用の丑の日を前に、スイスのジュネーブで開催されたワシントン条約の第29回動物委員会が開かれWWFのスタッフも参加しました。
約3年に一度開催されるワシントン条約の締約国会議。ワシントン条約は、絶滅のおそれのある野生生物を附属書に掲載し、国際取引を規制する国際法ですが、これを実行するためには、各締約国による国内法の施行がとても大切です。
その施行をさまざまな形でサポートしているのが、条約の各種委員会、事務局、NGOなどの関係者です。
その中でも、動物委員会・植物委員会は、科学的・技術的な助言を提供する重要な役割を担っています。
今回の動物委員会には、過去最高となる約300人が出席。飼育繁殖やサメ、カメなどの議題について議論が行なわれました。
その中にはウナギの議題も。
実は、過去数年、北アフリカの国からヨーロッパウナギが大量に輸出された記録があり、輸出許可書の出し方に問題があるのではないか?との疑惑が持たれ、要注意の種の一つとして取り上げられることになったのです。
今後、それらの国の対応に問題がないのかが検討されることになります。
2009年から附属書Ⅱに掲載され、輸出入が規制されているヨーロッパウナギの密輸は、年々世界的に問題視されるようになっていますので、今回のことが、問題解決に向けた大きな一歩になると期待しています。
北アフリカの国からウナギが日本に直接輸入されることは多くはありませんが、他国で養殖されたヨーロッパウナギが最終的に日本に輸入されることで、間接的に日本が違法取引に加担する可能性もあります。
ヨーロッパウナギの保全に協力するためにも、製品の種表示の義務化やDNA検査の実施が必要な時期に来ているのではないかと考えられます。

イギリスでのウナギ保全の取り組み(2017年7月2日)

先日、ウナギの国際シンポジウムがイギリスのロンドンで開催され、WWFのスタッフも参加しました。
会議後、イギリスの環境庁の方の案内で、河川でのウナギ保全の取り組みの現場も見学。
ヨーロッパに生息するヨーロッパウナギはIUCNレッドリストにCR(近絶滅種)として掲載されており、資源状態が非常に悪化しているとして、イギリスでもさまざまな保全の取り組みが進められています。
海から川にやってくるウナギにとっての脅威の一つは、水門や堰があって川に遡上できなくなること。
今回案内された川では、堰堤に設けられた魚道を上ってきたウナギをすぐ上流に移すということが行なわれています。
この日は、校外学習で辺りに来ていた小学生たちが見守る中、約50匹のウナギが無事に上流に移されました。この活動を2日に一度という頻度で行なっているとのこと。
環境庁の職員をはじめ、イギリスでウナギを大切に守っていこうと活動を続ける人たちの熱意が伝わってきました。
ヨーロッパウナギの保全にとっての他の脅威には、養殖のための東アジアへの違法取引があります。
ヨーロッパウナギのEU外への持ち出しはワシントン条約により禁止されていますが、密輸が後を絶ちません。
生息域での保全の取り組みを無にしないためにも、ウナギの一大消費国である日本が、違法に取引されたウナギに「ノー」の声を挙げ続けることは国際的にも重要な要素といえます。

密輸組織を摘発!その密輸品は...ウナギ?(2017年3月18日)

先日、「ウナギの密輸組織を摘発した」というニュースが飛び込んできました。
ギリシャとスペインの当局が、欧州警察機構(ユーロポール)と欧州司法機構(ユーロジャスト)の協力のもと、ヨーロッパから中国へウナギを密輸する組織を摘発。計17人を逮捕し、ウナギの稚魚(シラスウナギ)約2トンを押収した、と発表したのです。
推定では、組織が毎年EU域内から密輸していたウナギは7トン以上。シラスウナギが1匹0.3グラムだと仮定すると、毎年、違法に取引されていたウナギは2000万匹以上となります。
ヨーロッパウナギは、ウナギ属16種の中で、最も資源状態が悪く、ワシントン条約でも附属書Ⅱに掲載され、国際的な商業取引が規制されています。
EUは、2010年12月以降、その輸出入を禁止。
しかし、かば焼きなどに使うウナギを中国で養殖するため、EUから香港経由で密輸する例が続いています。
この問題を重く受け止めたEUでは、各国の警察当局が協力して調査を実施。
その結果、今回の密輸組織の摘発につながりました。
こうしたウナギの密漁や未報告漁獲は、日本でも蔓延しています。
EUに倣い、より真剣に取り組む必要があるといえます。
何より、日本はウナギの一大消費国。違法なウナギに対しては、断固、ノー!の声を上げることも重要です。
ウナギを持続的に利用していくには、法律や流通、消費のあり方を変える必要があり、それには多くの時間と労力がかかります。
それでも、ヨーロッパで同じ問題に真剣に取り組む人たちがいるのです。

ワシントン条約でウナギの国際取引の調査が行なわれることに(2016年9月26日)

2016年9月24日から始まったワシントン条約の締約国会議(COP17)で、ウナギに関する議題が話し合われました。
EUが提案した、ウナギ属の生態や取引の実態調査の実施について議論が行なわれ、日本を含むすべての国が全会一致で採択したのです。
これは、2007年に附属書IIに掲載され、商業取引が規制されたヨーロッパウナギの密輸が今も続いていることなどを受け、提案されたものです。
トラフィックでは以前より、ヨーロッパウナギの国際取引の規制が一端となり、代替として使われるアメリカウナギや東南アジアに生息するウナギの需要を高めてきたことを指摘していました。
特に、熱帯に生息するウナギは、生態や資源量を含め分かっていないことが多く、調査や漁業管理、取引の監視などが必要になっています。
今回の提案は、こうした背景から行なわれたものでした。
ワシントン条約の会議では、「野生生物の取引の規制」についてだけでなく、こうした調査や保全策についての議論や提案も行なわれているのです。
採択された提案は、10月4日の全体会合で承認され、正式に決定となる見込みですが、もちろん日本にも深くかかわるものです。
最近は国内での稚魚(シラスウナギ)の密漁や、ニホンウナギの違法取引について、メディア等でもよく取り上げられていますが、問題の解決にはまだ至っていません。
日本は、世界有数のウナギの消費国、輸入国、そして生息国として、率先してこの問題に取り組み、責任を果たしていく必要があります。
次にワシントン条約会議(COP18)が開かれるまでの約3年間は、ウナギの問題に対処する上での正念場になるでしょう。
ワシントン条約の下での調査や検討を通じて、ウナギの持続可能な利用が着実に実現されるように、積極的に関わっていきます。

「土用の丑の日」とウナギの話 (2016年7月26日)

暑い夏とともに、「土用の丑の日」が近づいてきました。
土用の丑といえばウナギ。
ウナギの味に似た近畿大学発のナマズのかば焼きも話題になっていますが、ウナギ消費のほとんどは、今も夏の土用の丑の日あたりに集中するそうです。
ウナギはIUCNのレッドリストでも、環境省のレッドリストでも絶滅危惧種に指定されていますので、ウナギの需要をナマズに移すというのは一案かもしれません。
とはいえ、ウナギをすべてナマズに代える、というのも難しい話ですから、ウナギを持続的に利用する方法を考えねばなりません。
そのためには、 ダムなどの河川構造物の設置や生息域の減少、そして人による過剰な利用(漁獲)といった問題に対処していく必要があります。
ウナギが生息しやすい河川環境の保全については、環境省が現在、2017年3月の公表を目指して、新たな指針を策定しようとしています。
また、トラフィックとWWFも指摘を続けてきた「過剰な利用」については、2016年9月末から南アフリカ共和国で開催される ワシントン条約(CITES)の第17回締約国会議でも、ニホンウナギを含めたウナギ属の取引が議題に上る予定です。
取引規制の提案ではありませんが、国境を越えて続く ウナギの違法取引の根絶に向けて、今回の会議がターニングポイントになることが期待されます。
人による取引や利用が、その野生生物の生息に大きな影響を及ぼすことは、ウナギの例を引いても明らかです。
さまざまな生物の取引について、今回のワシントン条約会議で何が話し合われるのか。
議題については、随時発信していく予定ですので、ぜひチェックしてみてください。

合計300キロ!香港税関で押収が続くヨーロッパウナギ(2016月3月17日)

日本ではウナギと言えば「夏」のイメージが強くありますが、養殖のためのウナギの稚魚(シラスウナギ)の取引が盛んなのは、春先の時期です。
野生生物の国際取引を監視するトラフィックでは、以前よりこのウナギの稚魚の密漁と違法取引に注目し、問題を指摘してきました。
しかし違法な国際取引の例は跡を絶ちません。2016年1月から3月10日までの間にも、香港の税関では、5件のヨーロッパウナギの稚魚の押収が報告されました。
押収された量は合計で300kg以上。
ここには輸送のための水も含まれていますが、稚魚を一尾あたり約0.3gと仮定すると、密輸された数は相当数にのぼることが分かります。
ヨーロッパウナギは、2007年のワシントン条約締約国会議で附属書Ⅱに掲載された後、2010年12月からはEUからの輸出入が禁止されています。
しかし、養殖を目的としたEUから中国への密輸は、その後も続いていると言われています。
さらに、中国で養殖されるこのヨーロッパウナギの中には、日本に再輸出されるものが含まれているため、日本もまたこの問題に無関係ではないのです。
加工され、お店などに並ぶウナギは、見ただけではどこで漁獲されたものなのか、また違法か合法かを判断することができません。
ですから、こうした取引をなくすためには、その流通にかかわる関係者の人たちの「違法な品は扱わない」という、断固とした態度が欠かせないのです。
香港当局は現在、ワシントン条約に違反して取引される違法なウナギの押収に力を入れていますが、こうした取り組みや意志は、違法取引撲滅に向けた大事な一歩と言えます。
トラフィックでは今後も日本やEU、関係国・地域の当局に対し、違法取引をなくすための働きかけと協力を続けていきます。

ウナギがフィリピンからやってくる!?(2015年9月25日)

ウナギに関する会合が、フィリピンのクラークで開催されました。
これはフィリピンの水産当局(BFAR)が、増加するウナギの違法取引を懸念して主催したもので、同局の職員やフィリピンのウナギ業界の人々が参加。
フィリピンでのウナギの保全と持続可能な利用のため、流通経路の調査や分析などが行なわれました。
野生生物の国際取引を監視するトラフィックからも、東アジアのウナギの生産や取引、消費の概要とその問題点についてお話をしました。
フィリピンでは、5種を超えるウナギ属(Anguilla spp.)のウナギが生息していますが、過剰漁獲などによりニホンウナギ(Anguilla japonica)はほとんど獲れなくなってしまったと言われています。
また、2012年5月以降、フィリピンでは体長15cm以下のウナギの輸出を禁止しましたが、養殖に必要なウナギの稚魚(シラスウナギ)の需要はいまだに大きく、東アジアへの違法取引が後を絶ちません。
地元の人はウナギをほとんど食べないそうですが、フィリピンのウナギの価格もここ数年で大きく変化しています。
日本を含むウナギの需要が、さまざまな国のさまざまな人に影響を与えているということを、今回の機会でも改めて認識させられました。
そんな状況の中でトラフィックは今、ロンドン動物学会(ZSL)やBFARなどとともに、フィリピンのウナギの保全・管理を促進するためのプロジェクトを実施しています。
今後はウナギの管理計画を策定し、地元の人々によるデータ収集の仕組みを作るほか、税関などの関係者へ向けた研修も実施する予定です。
ウナギの持続可能な利用のために、日本もその一大消費国として、他の東アジアの国や地域と共に、違法な漁業や取引を根絶していくことが求められています。

ワークショップ 「ウナギはどこへ?」を開催しました(2015年8月5日)

猛暑が続く2015年、土用の丑の日をきっかけにウナギへ熱い視線が向けられています。
7月中のウナギに関する新聞記事も500件を超えたとのこと。
そんな、日本人にとって文化的にも商業的にも重要なウナギですが、資源の減少が心配されています。
そこで先日、ウナギの生産・消費の現状について、知って考えていただくためのワークショップを開催しました。
小学生からウナギに携わるお仕事をされている方まで、30名以上が足を運んでくださいました。
前半は、先ごろ報告書『ウナギの市場の動態』を執筆したトラフィックの水産プログラム担当から、ウナギの生産・取引の現状をお話ししました。
その中で、日本は今でも世界の6~7割のウナギを食べているのか?外国のウナギの消費が増えているのか?といった疑問にもお答えしました。
後半は、6つのグループに分かれての意見交換。
「ウナギを持続的に利用していくために、私たちは何をすべきでしょうか?」というテーマを、消費者の立場で話し合っていただきました。
いずれのグループも活発なディスカッションがなされ、消費者目線を超えた幅広い意見が出されました。
特に、「認証制度の導入ができると良い」、「スーパーなどでの購入時にどこ産のウナギか聞いてみる」など、消費者が"選ぶ/選べる"仕組みが重要との声が多くあがりました。
その他にも、「NGOが情報提供に努め、消費者はそうした機会を積極的に活用する」といった、身の引き締まるような期待の声も寄せられ、学びの多い会となりました。

ニホンウナギの資源保護をめぐる国際会議閉幕(2014年9月18日)

東京で開催されていた「ウナギの国際的資源保護・管理に係る第7回非公式協議」が閉幕しました。この結果、乱獲により資源の枯渇が懸念されている、ニホンウナギ稚魚の「池入れ」を20%削減することや、国際的な養鰻管理組織の設立が合意されました。いずれも、資源の確実な回復を約束するものではありませんが、これまで実施されてこなかったニホンウナギの国際的な資源管理がスタートしたことは、今後の保全に向け、大きな意味を持つものです。

日本、中国、韓国、台湾の関係者が集まった会議


2014年6月、IUCN(国際自然保護連合)のレッドリスト(絶滅のおそれのある野生生物のリスト)に、ニホンウナギが絶滅危惧種(EN)として掲載されました。
その最大の原因は、日本をはじめ、中国、台湾、韓国などの生息域で続いてきた、稚魚(シラスウナギ)の乱獲です。
シラスウナギは捕獲されたのち、ウナギを養殖する養鰻場に入れられ、生け簀で育てられ出荷されます。これらは通常、「養殖うなぎ」として流通していますが、完全な養殖ではなく、天然資源に頼っているのが大きな特徴です。
また、中国や台湾での養殖うなぎは、日本向けにその大半が輸出されており、世界でも最大のウナギの消費をまかなっています。
ニホンウナギの資源の激減が指摘される中、2014年9月16日、17日の両日、日本政府が呼びかけ、中国、台湾、韓国が参加した「ウナギの国際的資源保護・管理に係る第7回非公式協議」が開催されました。
これは、生息国におけるニホンウナギの調査や資源管理を行なっていく上で、関係国が協力して対処していく必要があることを受け、開かれたものです。

成立した合意


この協議では、大きく2つのことが合意されました。
まず、漁獲し、養鰻場に入れている(池入れ)ウナギの稚魚の量を制限し、直近の数量から20%削減すること。そして、その実施のための国際的な養鰻管理組織の設立が合意されたことです。
もっとも、これらの施策は、現時点で資源回復や適切な漁業管理を約束するものではありません。
20%の削減は、科学的な根拠のある目標ではなく、また設立が合意された国際的な養鰻管理組織も、あくまで各国の養鰻管理団体だけで組織される任意団体であり、法的な拘束力を持つものではありません。
ニホンウナギの絶滅を防ぐためには、漁業管理や生産量の調整はもちろん、生息域の改善や放流の効果の調査などを含めた、実効性のある資源回復計画を実行し、予防原則に従った、より厳しい漁業管理を推進してゆく必要があります。

スタートラインに着いたニホンウナギの保護管理


それでも、過去にこうした取り組みが存在しなかったことを顧みれば、今回の合意には重要な意味があるといえます。
今後、取り組みの成果を客観的に検証してゆく上で、行政や研究者、NGOなど多様なステークホルダーが参画しつつ、法的な拘束力のある国際的なルールが設置されてゆけば、ニホンウナギの資源管理は前進することが期待できます。
ニホンウナギの利用について、WWFおよび、野生生物の国際取引を調査、監視するトラフィックでは、特に以下の3点が必要と考えています。
1)稚魚・成魚の漁獲・養殖の記録・報告の徹底
2)稚魚まで遡ることのできるトレーサビリティの確保
3)科学的知見に基づき、予防原則に従った資源回復計画の策定
ニホンウナギは日本の食文化にとってなじみ深いものであるのみならず、東アジアの海と川の自然をつなぐ、特異な生態を持つ野生生物の一種でもあります。
WWFとトラフィックは、ニホンウナギの保護と持続可能な利用を目指していくために、生産や小売、消費者に、ウナギについての理解を深めてもらいながら、流通関係者との意見交換や、ウナギの取引量・供給量に関する調査を実施していく予定です。

緊急!求められるウナギの資源管理 (2014年6月19日)

2014年6月12日に発表された最新版の「レッドリスト」に、減少が心配されているニホンウナギが、絶滅危惧種(EN)として掲載されました。ウナギ類は他の種についても危機が指摘されており、世界的にもその現状が危ぶまれ始めています。消費量の半分を輸入に頼っている日本をはじめ、ウナギ類を漁獲・消費している東アジア諸国で、早急な資源管理の強化を実施することが必要とされています。

ニホンウナギが絶滅危惧種に


絶滅の危機にある世界の野生生物をまとめた、IUCN(国際自然保護連合)のレッドリスト。2014年6月12日に発表されたその最新のリストに、ニホンウナギが「絶滅危惧種(EN:絶滅危惧1B類)」として新たに掲載されました。
ニホンウナギが減少した要因として、レッドリストでまず指摘されているのは、食用のための過剰な漁獲。その他、海洋環境の変化(エルニーニョ、台風、地球温暖化など)や、河川の自然環境の破壊、水質の汚染などです。
世界におよそ19の種・亜種が知られるウナギ類は、生態に不明な点もまだ多くありますが、すでにヨーロッパウナギが、絶滅危機の最も高い「近接絶滅種(CR:絶滅危惧1A類)として、レッドリストに掲載されています。
さらに近年、東アジアで養殖が盛んな「ビカーラ種(Anguilla bicolor)」と呼ばれるウナギも、今回のレッドリストの中で「低危険種(LC)」から「近危急種(NT)」にランクアップ。絶滅リスクが高まったと判断されました。
また漁獲対象となる種自体も増えており、最近はニホンウナギ、ヨーロッパウナギなどのほか、上記のビカーラ種やオオウナギも食用に漁獲されるようになっています。

「養殖」も問題に


現在、食用に利用されている世界のウナギの総生産量の約95%は、養殖によるものです(FAO 2012年)。
養殖は、自然の海や川から採捕した稚魚のシラスウナギを種苗として行なわれており、この種苗の過剰な漁獲が、ウナギ類を危機に追いやる大きな原因の一つとなってきました。
すでに著しい減少が認められているヨーロッパウナギは、1980年から2005年までの間に、養殖用シラスウナギの採捕量が、平均95%から99%も激減してほとんど獲れなくなり、資源の枯渇が明らかとなりました。
この時、ヨーロッパウナギの種苗は、50%以上がアジアに輸出されていましたが、その取引には透明性が無く、価格が高騰している事などが、同時に問題として強く指摘されました。
ニホンウナギもまた、種苗の稚魚の減少を受けて、各国がその確保に躍起になっており、資源の減少と取引価格の高騰など、ヨーロッパウナギにも共通した問題が、多く認められます。
とりわけ日本は、国内用の養殖用の稚魚の半分を輸入に頼っており、その影響と責任は、小さくありません。

密漁と密輸 横行する不正行為


密漁や密輸、また報告の不備といった行為もまた、大きな問題となっています。
その一例が、2013年度に日本で採捕されたニホンウナギの稚魚の総量です。 各県に報告された採捕量の合計と、実際に国内の養殖場に入れられたシラスウナギ量を比較したところ、各県の報告量が、実際の養殖に使われた量を、大きく下回ったのです。
国際取引においても、同様の問題が見受けられます。
ビカーラ種をはじめ、数種のウナギが生息するフィリピンは、シラスウナギの減少を受けて、2012年にその輸出を禁止しました。ところが、2013年の日本の貿易統計では、2トンを超えるシラスウナギをフィリピンから輸入したことになっています。
こうした不正な報告や行為は、実際の資源管理の効果を無にするのみならず、市場や一般の消費者に対して、持続可能とはいえない、無責任なウナギを供給する、大きな要因となるものです。
フィリピンの例が示すように、生息国が保全を理由にシラスウナギの輸出を禁じている場合には、輸入する側の国々も、国内での養殖の規制を検討するなど、過剰な漁獲を抑える施策を採るべきでしょう。
また、こうした問題について改善が認められない場合は、ウナギ類としては初めて「ワシントン条約(CITES)」に掲載されたヨーロッパウナギと同様に、国際取引の規制という側面から、対策を取る必要が出てくる可能性もあります。

日本そして生息国の国々に求められること


ニホンウナギは、日本をはじめ、中国、台湾、韓国で漁獲され、国際的な取引が行なわれている、経済的にも重要な魚の一種です。
そして同時に、この東アジア地域の生物多様性を形作る、野生生物の一種でもあります。 ニホンウナギは、マリアナ海域で産卵・孵化し、海流に乗って、日本などの川や沿岸で数年をかけて成長。再び産卵場に向けて旅立ちます。
これを保全するためには、生息域に該当する国々が確実に連携しながら、資源の管理強化と、違法な行為の取り締まりを、厳しく、緊急に実行してゆかねばなりません。
特に、資源管理を実効的なものとしていくためには、養殖業者はもとより、小売や外食産業との協力・連携が不可欠です。
そして、なによりもウナギを食べる消費者自身が、ウナギの養殖や取引の実態について理解を深め、適切な消費を心がけることが重要です。まず出来ることとして、食べるウナギの原産地や種名を確かめてみることから始めるのも良いでしょう。
こうした取り組みを支援するために、野生生物の国際取引をモニタリングする「トラフィック」では現在、フィリピンにおけるウナギの国際取引についての調査を実施しているほか、WWFジャパンも「持続可能」なニホンウナギの利用のあり方について、流通関係者と意見交換を行なっていくことにしています。
養殖用の種苗(稚魚)のみならず、海外で養殖された活ウナギやウナギ加工品の輸入が、国内消費の半分以上をまかなっている、ウナギの消費大国、日本。 ウナギをめぐる問題は、その日本にとって、果たすべき責任のある大きな課題です。

ニホンウナギがIUCNのレッドリストに(2014年6月12日)

IUCN(国際自然保護連合)が毎年更改している「レッドリスト(絶滅のおそれのある野生生物のリスト)」の最新版を公開しました。
今回は、ニホンウナギが、絶滅危惧種のカテゴリーに入ったということで、新聞やテレビでの報道が相次いでいます。
IUCNのレッドリストは、生物種の絶滅のリスクを評価するものとして、世界的に権威のあるものです。
最新版のレッドリストでは、絶滅危機種は哺乳類、鳥類、爬虫類、植物など全部合わせて、2万2,103種となりました。
このリストは、あくまで危機を示すものであり、これに掲載されても、すぐに保護が行なわれるわけではありません。
しかし掲載された野生生物については今後、これまで以上に、保全策が検討されていくことでしょう。
ニホンウナギは今回「EN(絶滅危機1B類/絶滅危惧種)」とされましたが、国内では環境省が2013年2月に、日本版のレッドリストで、すでに「絶滅の恐れがある種」に指定していました。
ニホンウナギはフィリピンのマリアナ海溝付近で産卵し、黒潮にのって、日本を含む東アジアの沿岸に回遊します。
日本の河川では、その稚魚であるシラスウナギを漁獲して、養殖しています。
シラスウナギは1960年代前半には、年間200トンを超える漁獲がみられましたが、ここ数年は10トン程度と大きく減少。不漁のために、ウナギの価格上昇が続いていました。
減少の原因として指摘されるのは、過剰捕獲や生息地の喪失、海洋環境の変化などで、危機にある他のさまざまな野生生物とも共通した点が見られます。
自然の一部としてのウナギを守り、漁業資源を保全して持続可能な形で利用してゆくためにも、その保全に向けた議論が活発になっていくことを期待したいと思います。

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