©Adam Dederer

報告書『火災、森林、未来:暴走する危機』2020年の森林火災は2019年よりも悪化する可能性を指摘

この記事のポイント
WWFとボストンコンサルティンググループ(BCG)は、2020年8月27日、世界の森林火災に関する新しい報告書『火災、森林、未来:暴走する危機』を発表。報告書では、2020年4月の世界の火災警報の数は2019年と比べ13%増加しており、世界で観測される野火の75%は人間に責任があると指摘しました。森林火災の防止と森林の保護対策に、より一層の重点を置くことが重要です。

2020年4月の世界の火災警報の数は、2019年4月と比較して13%増加しており、2020年はすでに、昨年にも増して記録的な森林火災の年となっています。

主な要因は、農業用地への転換を主な原因とする森林破壊と気候変動の影響によって、長期間にわたって高温で乾燥した天候が続いていること。

火災の傾向が人と地球にもたらす影響を詳しく分析し、原因と対処法を示すため、WWFとボストンコンサルティンググループ(BCG)は、2020年8月27日、世界の森林火災に関する新しい報告書『火災、森林、未来:暴走する危機』を発表しました。

報告書『火災、森林、未来:暴走する危機』

野火の増加と人間活動

世界で観測される野火(wildfire; 森林、サバンナ、草原などの火災)は、全ての生物相に影響を与えます。

消失した森林の面積は、火災により焼失した面積のおよそ10%ですが、その高い炭素貯蔵力により、火災関連の二酸化炭素放出の4分の1を占めるまでに上ります。

野火の増加は、意図的または人間活動によるものです。
北半球でのほとんどの火災は、ゴミや瓦礫の焼却、労働災害、農業による過剰利用など過失によるものであり、放火が原因となることも。

一部の熱帯および亜熱帯地域では、森林火災は主に土地利用の変化、耕作、および新たな農業地の開拓のために意図的に起こされています。

その結果、野火全体の75%は、人間に責任があることが報告されました。

©naturepl.com / Bence Mate / WWF

火災の増加が引き起こす、悪循環

火災が自然に発生するか、人間活動により故意に発生するかに関わらず、その影響はここ数十年で増大しています。

消失した面積、火災の頻度、深刻度の3つの要因から、気候変動の影響が増大していることが明らかになっています。

火災により放出された二酸化炭素は、地球温暖化を加速させ、さらなる悪循環を生みます。

極端に高温となり乾燥した気候が、より頻繁に激しい火災を発生させ、森林の炭素排出量を増加させるというサイクルが作られるのです。


現在の傾向が続く場合、何百万トンもの炭素の放出が上乗せされるため、長期にわたって破壊的な影響が生じます。

火災直後に起きる影響に加えて、生物多様性を壊滅的な状態にし、生命維持に必要な生態系を破壊し、人々の生命・財産・暮らし・経済を脅かし、世界中の数百万人に深刻な健康問題が長期的に発生するリスクを伴うことになるのです。

©Ramon Aquim / WWF-Brazil

2020年の今年は、パリ協定の下で各国が国別目標を強化して、再提出することが期待されている重要な年です。

昨今の森林火災による深刻な影響を受け、すべての政府が野心的な国別目標を再提出することや、森林火災の予防策の強化などを、本報告書は求めています。


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