日本での地球温暖化対策
2009/09/14
日本に求められる脱炭素化
日本は排出大国!?
日本のCO2排出量は2014年時点で、世界で第5位。世界全体の排出量の約4%程度を排出しています。
他の国々の経済成長とCO2排出量増加にともない、日本の排出量の存在感は徐々に小さくはなってきましたが、他の約190カ国に比べればまだまだ排出大国です。
しばしば「1位の中国や2位のアメリカに比べれば排出量が小さい」という事実ばかりが強調されますが、日本の排出量は、世界の大多数の国々からみれば、決して小さな数字ではありません。
IPCCの第5次評価報告書が指摘するように、温暖化による世界の平均気温の上昇を2度未満に抑えるためには、地球全体の温室効果ガス排出量を2050年までに40~70%程度削減(2010年比)することが必要で、さらに、21世紀後半には、ゼロとしなければなりません。
そのためには、日本が率先して排出量を削減していくことが求められます。
日本の排出量の傾向
日本のCO2排出量は、1990年~2000年代前半まで増加したのち、増減を繰り返していますが、減少傾向への転換はできていません。
京都議定書の第1約束期間であった2008~2012年に、日本が約束した「1990年比で6%削減」という目標は一応達成できました。今後は、カンクン合意の下で自主的に約束している「2020年までに2005年比で3.8%以上削減」という目標と、パリ協定の下で誓約した「2030年までに2013年比で26%削減する」という目標を着実に達成していくことが必要です。これらの2020年および2030年の目標は、国際的には不十分であると認識されているので、達成するべき最低限の水準であると認識するべきです。
鍵を握るエネルギー分野での削減
日本のCO2排出量の内訳をみると、その大部分は「エネルギー転換」、つまり、発電をしたり、(工場で使うような)熱を作ったり、石油を精製する過程での排出が多くを占めているのが分かります。
これに、産業(工場など)、運輸(主に自動車)、業務その他(オフィスビル・商業施設など)、家庭が続きます。
発電からのCO2排出量を、電気を使っている家庭などの側に振り分けると、少し見え方は変わりますが、いずれにせよ、電気などのエネルギーを使用することが大きな排出源になっているという事実は変わりません。
石油や石炭などの化石燃料の大半は、エネルギーを得るために使用しているので、「脱炭素化」をしていくためには、日本のエネルギー利用のあり方を根本から変えていく必要があります。
そのためには、まずエネルギーの消費量そのものを減らし(省エネルギーの推進)、同時に、エネルギー源を化石燃料から自然エネルギーなどに移行(再生可能エネルギーへ転換)していくことが必要です。
海外で削減すればよい?
時々、日本の排出量はもう世界的に見ても少ないし、日本で削減するのにはコストがかかりすぎるので、日本は海外での削減に貢献すればよいのではないか、という主張が聞かれます。
日本での省エネの取り組みはもう十分にやったので、「乾いた雑巾」であり、もう削減はできないので、むしろ、日本は自国の優れた環境技術を通じて、他の成長している国で削減をするべきだ、という内容です。
確かに日本には優れた技術があり、それをもって他国の排出量削減に協力をすることは大変重要です。
しかし、ここまでに見たように、日本の排出量は世界的に見ても決して小さいわけではありません。
その国が、「自分はやらない」と言ってしまったら、他の190カ国はどうなるでしょうか? ましてや、そのようにして、自国での削減努力を怠ってしまった国が「優れた環境技術」を、これからも他国に提供し続けることなどできるでしょうか?
日本は世界的に見ても、エネルギー効率が良い国の1つです。
それでも、近年は他国が追い上げてきており、かつてのような優位性はもはやありません。
これからは、日本自身の競争力のためにも、日本での排出量を減らす努力をし、その努力を通じて、削減に必要な技術を育てていくことが重要です。
国内・海外の両方で、日本は排出量削減に貢献しなければならないのです。
WWFジャパンが提案すること
野心的な目標とそれを支える政策の提案
WWFジャパンは、日本を脱炭素化、すなわち、エネルギーを石油や石炭などの化石燃料に頼らない社会へと導く、政策の導入を政府に対して訴えています。
そのために必要な道筋を研究者に委託して具体的に検討したり、それを基にして、提案を行なったりしています。
また、具体的にそれを実現するための政策の提案もしています。また同時に、産業界に対してもそのような政策の導入を支持するよう働きかけています。
温室効果ガス排出量取引制度
脱炭素社会に向けた動きを加速させる重要な提案として、WWFジャパンは温室効果ガス排出量取引制度を中心とするポリシーミックスを提案しています。
「排出量取引制度」とは、経済的手法と呼ばれるタイプの政策で、企業に温室効果ガス排出量の規制をかけつつ、企業間で「どれくらい排出してよいか」の枠を取引すること可能にする仕組みです。
アメリカの発電所からの硫黄酸化物の排出量を削減するために作られた仕組みでしたが、近年では、EU、アメリカの一部の州、中国、韓国などで、温室効果ガスについても実施されるようになってきました。
脱炭素社会に向けたエネルギーシナリオ提案
WWFインターナショナルは、2011年、世界全体で2050年までに「自然エネルギー100%」を目指すエネルギービジョンを発表しました。
このビジョンを日本で実現することはできるのか? 実現するためにはどのようなことが必要なのか?
WWFジャパンは、「自然エネルギー100%」を日本で実現するためのシナリオを検討しました。
WWFの地球温暖化に対する取り組み
世界各国にネットワークを持つ「WWF気候・エネルギー・プラクティス」では、地球温暖化を引き起こす温室効果ガスの排出量を大幅に削減する国際的な協定を、各国政府と産業界、金融セクター、そして一般市民から引き出すことができるよう、世界各地で活動を展開しています。