地域での再生可能エネルギープロジェクト
2015/06/02
地球温暖化を抑止するには、その対策として太陽光、風力、バイオマス、小水力、地熱といった「再生可能エネルギー(自然エネルギー)」の普及が、きわめて重要となってきます。WWFでは、こうした再生可能エネルギーの普及を着実に進めていくため、地域においてその普及を促進するサイトプロジェクトを展開しています。
再生可能エネルギーの着実な普及に向けて!
普及への期待
いま、太陽光や風などを活用することで、持続的にエネルギーを生み出す再生可能エネルギーが注目を集めています。
石油や石炭といった、化石燃料に依存しないエネルギーの形態であることから、温暖化の抑止に貢献することはもちろん、資源の乏しい日本がこれまで輸入していた年間20兆円にものぼる莫大な化石燃料費の負担削減という面からも期待されます。
また、再生可能エネルギーが今後日本で大幅に導入されることになれば、そのインフラなどの整備や施工、維持・管理などが発生するため、これらが新たなビジネスを生み出す経済的な効果もあるとみられています。
まさに、環境と経済の双方に大きなメリットをもたらす可能性を秘めた、今後の更なる普及拡大が望まれる取り組みといえるでしょう。
新たな取り組みへ:鳴門市での再生可能エネルギー普及プロジェクト
こうした中、WWFジャパンでは、徳島県鳴門市を舞台に再生可能エネルギーの地域での普及を目指す、モデルプロジェクトを2014年6月から展開しています。
これは地域が主体となりつつ、WWFジャパンが支援をすることで、再生可能エネルギー普及の模範例をつくるプロジェクトです。
具体的には、地域において再生可能エネルギーの導入に適したエリアを、様々な情報を元に整理して地図に落とした、「導入適地マップ」の策定や、導入を促進するための独自の支援策を検討する予定です。
普及に向けた課題解決
取り組みの背景
WWFジャパンが鳴門市で実施するプロジェクトは、地域における再生可能エネルギー促進が抱える、いくつかの課題の克服に挑戦するものでもあります。 代表的な課題として、以下の2つがあります。
【課題 その1】現在日本各地で行なわれている再生可能エネルギーの導入が、必ずしも地域に便益をもたらすものになっていないこと
現在の開発の多くは、たとえば東京や大阪に本社をおくような、地域外の比較的大きな事業者が手掛けており、開発によって得られた収益も、多くが地域内に残らず、外部に流れる傾向にあります。
大規模な再生可能エネルギー普及のためには、こうした大企業による取り組みも必要ではありますが、地域に便益がもたらされない形で、土地が使われ、場合によっては景観が損なわれたりする開発が多くなれば、その地域の発展にとって決してプラスとならず、持続可能ではありません。
これは、長期的な再生可能エネルギーの持続可能な利用と、順調な普及を、妨げるものとなります。
【課題 その2】開発にともなう地域の自然環境や社会への影響
風車や太陽光パネルの設置は、場所によっては地域の自然や景観などに少なからず影響をあたえます。
しかし、その影響を事前に調査する、現行の環境アセスメント(影響評価)制度では、ある程度の規模の開発であってもアセスメント実施の対象にならないものがあります。
つまり、地域の重要な自然環境を保全しながら、開発を行なう場合は、ただ法的な手続きに則っているかどうかだけでなく、実際に影響が及ばないように、慎重に注意しながら、取り組みをすすめていく必要があります。
課題の解決には
WWFジャパンでは、この鳴門市でのプロジェクトを通じて、地域自身が主役となった、再生可能エネルギーの普及事業を支援してゆきたいと考えています。
その手段の一つとして、生み出す再生可能エネルギーの規模を最大化しながら、環境や社会への影響を最小限にとどめるために、必要な情報を『地図』のような形で可視化し、公開する試みも行なっています。
そして同時に、文献調査と実地調査による、開発に適した土地の情報を活用し、地域にも便益をもたらす導入計画の実現をめざしてゆきます。