2012年 WCPFC北小委員会閉幕 注目されるクロマグロ資源の調査結果
2012/09/06
2012年9月5日、長崎で開かれていた中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)、第8回北小委員会の会議が終了しました。これは、中西部太平洋のマグロ資源について各国が話合うもので、ここでの決定は次回のWCPFC総会の決定に大きく影響します。特に、2012年度は太平洋クロマグロの管理基準が策定される注目の年。今回の会議でもクロマグロについての漁獲と輸入について合意が交わされました。
クロマグロ資源は「様子見」
今回のWCPFC第8回北小委員会の会合では、クロマグロの漁獲について、2010年にWCPFCで決められた管理措置(CMM2010-04)が、暫定的に継続されることが決まりました。
このCMM2010-04は、「0~3才魚の太平洋クロマグロの漁獲を、2002~2004年レベルより削減する」というものです。継続は、2012年中に予定されている、北太平洋まぐろ類国際科学委員会(ISC)による最新の資源評価の結果が提出されるまで、となりました。
また、この管理措置を各国が導入したにもかかわらず、ISCの発表する資源評価の結果が悪い場合は、緊急に管理措置の改定について検討することも留保されました。
ただし、今回のCMM2010-04の暫定的な継続については、その「適用除外」についても、継続されます。
日本では、CMM2010-04の適用除外として、巻き網で年間4500トンのクロマグロ幼魚の漁獲枠を設定しています。同じく適用除外の国内の小規模漁業については、これまで自由漁業であったものを登録制に移行し、登録漁船が1万3000隻という実態が報告されました。
北小委員会は、漁獲実態(漁船のサイズや船員数など)に関するより詳細な実態の把握を要請。また、適用除外になっている韓国に対しても、管理措置のありかたを考慮し、自国の漁業による0~3才魚の漁獲について、実態把握等に努めることを求めました。
重要な意味を持つ0~3才のクロマグロ
こうした0~3才魚をめぐる資源管理の議論が重要な理由の一つは、現在の太平洋クロマグロの漁獲が、この0~3才魚に大きく依存していることにあります。
中西部太平洋で漁獲される0~3才魚の漁獲尾数は、同海域でのクロマグロ全体の漁獲尾数の実に98%。
今後の太平洋クロマグロの持続可能な利用を進めてゆく上で、その資源管理が十分にできるかどうかは、大きなカギとなります。
そのためにも、国際的な管理措置であるCMM2010-04を有名無実なものとしないよう、厳格な適用と、「適用除外」なき実施が必要です。
たとえば、適用除外となっている韓国については、「クロマグロは自国漁業の主要漁獲対象でない」としながらも、コンスタントな漁獲と日本への輸出を行なっており、その影響が懸念されています。
また、日本としても、CMM2010-04を適用して自国の漁業を規制する一方で、「適用除外」の韓国産クロマグロを輸入しており、国内消費の実態に矛盾が見受けられます。
待たれる科学委員会の結論
さらに、近年はクロマグロの養殖(畜養)が増加していますが、その大半は卵からマグロを育てる完全養殖ではなく、種苗となる天然の幼魚を漁獲し、太らせて流通させるものであるため、0~3才魚の資源に影響が及ぶことが懸念されます。
日本はこうしたクロマグロ養殖に種苗を供給する零細漁業についても、国内養殖業に対する規制措置を導入することで、間接的にコントロールを図っていますが、こうした間接的な措置の成果は、まだわかりません。
いずれにせよ、2010年以降、過去2年間取り組まれてきたCMM2010-04による管理措置に、実効性が見られたのかどうか客観的に確認するためにも、まずはISCによる最新の資源評価の発表が待たれることになります。
このほか、今回のWCPFC北小委員会の結果としては、ビンナガの管理基準の策定方法について、議論が分かれたため、次回会合までにISCにさらなる情報を求めることが決まりました。
また、地域監視プログラム(ROP)については、2007年に決まった管理措置CMM2007−01に従い、5%のマグロ漁船に対して、2014年12月までに北緯20度以北の海域でROPを実施することが決定(適用率5%)。ただし、小型漁船が多い台湾については、2016年まで実施の遅延を認めるよう別途配慮を求めることが決まりました。
この地域監視プログラム(ROP)について WWFは、適切かつ最善の状態の操業を実践するため、すべてのマグロ漁船、つまり適用率100%の包括的かつ強力な地域監視プログラムROPの実施を要請しています。
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