絶滅寸前の四国のツキノワグマ 仔グマの順調な成長を確認
2015/03/17
WWFジャパンと認定NPO法人四国自然史科学研究センターは、四国の剣山山系で実施しているツキノワグマ調査によって、2013年冬期に生まれた仔グマが親離れをし、1歳まで無事に成長をしている事実を確認しました。これは、わずか数十頭が生き残るのみといわれる四国のツキノワグマが確実に繁殖し、成長していることを裏付けるものであり、個体群の未来と保護活動にとっては朗報です。
捕獲された1歳のツキノワグマ
四国自然史科学研究センターとWWFジャパンは、2012年7月から「四国地方ツキノワグマ地域個体群絶滅回避のための総合調査」を共同で実施し、2014年9月に、親離れしたばかりの1歳のツキノワグマの亜成獣を捕獲しました。
そして血液調査などを行なった結果、この今回捕獲した仔グマが、2012年9月から調査・追跡してきた、メスのツキノワグマ「ショウコ」が、2013年冬期に生んだ2頭のうちの1頭であることが明らかになりました。
ショウコ親子は2013年4月、冬眠穴で母グマと戯れる生後数カ月の仔グマの様子が観察・撮影され、同年10月にも、林野庁の四国森林管理局が設置した調査用の自動撮影カメラに元気な姿が捉えられていました。
さらに今回の捕獲・調査によって、仔グマは立派に親離れし、剣山山中で成長していることが確認されました。
仔グマの成長の確認は、絶滅が懸念される四国のツキノワグマ個体群の、確実な繁殖と若い個体の成長を裏付けるものであり、個体群の未来と保護活動にとっては朗報です。
また、今回実施した、血液などからのDNA鑑定により親子関係を明らかにする試みは、今後の個体群動態を調べる上で重要な手法になると期待されます。
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2013年5月に撮影された仔グマ。母グマは2012年9月から調査を続けてきた「ショウコ」でした。
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今回捕獲された仔グマ。足も大きくなってます。
四国のツキノワグマの未来のために
調査では通常、捕獲したクマに発信器を付け、その後の行動を追跡しますが、今回は捕獲個体が幼く小さかったため、調査チームは計測や採血などの作業のみにとどめ速やかに山野に戻しました。
調査に携わる四国自然史研究センターの山田孝樹氏は、「生息中心地域で新しく生まれてきた個体が、成長過程とともにどのように周辺地域に拡散していくのかは未だにわかっていない。この課題は個体群の存続と密接にかかわっているだけに、今後積極的に調査してゆきたい」とコメントしています。
総合調査では今後も、四国のツキノワグマの生態や行動範囲、さらには生息域の餌資源量の把握を通じ、保護区等に設定すべきエリアの選定や、保全策の実施につなげてゆく取り組みを目指していきます。
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月の輪の模様。個体識別の重要な手がかりです。
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四国山中では過酷な調査が続けられています。
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