つながり・ぬくもりプロジェクトの2年 第2ステージ、復興に向けた自然エネルギー支援へ


2011年3月11日、東北、関東を襲った東日本大震災。この未曽有の大災害は多くの人命を奪い、沿岸の人々の暮らしを破壊しました。「自然エネルギーを基盤とする持続可能な社会づくり」をめざして活動していた団体が集まり、緊急支援から始まった東日本大震災「つながり・ぬくもりプロジェクト」は、あれから2012年9月までの1年半のあいだに9000万円近くのご支援や助成をいただき、被災各地の233カ所に「太陽光発電」「太陽熱温水器」「バイオマスボイラーやストーブ」を供給しました。そして震災から2年を迎えた2013年、東京からの活動は一段落して拠点を仙台に移し、東北の協力団体を中心に息の長い支援に向け、自然エネルギーを通じた仕事興しや復興に結びつく、新たなステージの活動をめざしています。

「つながり・ぬくもりプロジェクト」は、第2ステージに移行しました

2011年4月4日に発足した「つながり・ぬくもりプロジェクト」は、東日本大震災による被災地域で、自然エネルギーによる緊急支援、復旧支援の活動を行なってきました。

計26の協力団体のうち、WWFジャパンを含む5つの幹事団体が日常の活動を担うとともに、当初の予定であった2012年秋の区切りを目途に、次の段階には何が必要なのか、活動の方向性を検討してきました。

その結果、幹事はこれまでの東京を中心に活動する団体から、今後は東北地域の団体が中心となり、「つながり・ぬくもりプロジェクト東北」として活動の拠点も仙台に置くことになりました。

従来からの支援活動を出来る範囲で継続しながら、東北地域とくに震災被災地域における、自然エネルギーの利活用の推進を目指した学習会・セミナーなどの啓発活動も行ない、将来的には復興支援を通じた雇用や仕事興しにもつながる、自然エネルギー導入活動へも幅を広げていきたいと考えています。

また、今までの活動を振り返り、新生「つながり・ぬくもりプロジェクト東北」の方向性を共有するイベントとして、2012年11月17日に仙台でシンポジウムを開催しました。

東日本大震災が残した教訓は、非常時にも素早く対応できる、安心安全な自然エネルギー社会への転換を、いかに迅速に実現していくことが重要かということです。この教訓を眠らせることなく、自然エネルギーを活用したこれからの東北における地域づくりのビジョンを、参加者の皆さんと共有しました。

新生した「つながり・ぬくもりプロジェクト 東北」へのご支援も、引き続きよろしくお願いいたします。

WWFジャパンによる一連の支援と、復興への足がかり

WWFジャパンも、つながり・ぬくもりプロジェクト開始当初から、幹事団体の1つとして現場プロジェクトに関わってきました。

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緊急支援フェーズ:

多くの避難所が、電気も水道もない過酷な状況に置かれていた間は、南三陸町戸倉地区や石巻市の湊中学校といった、特に被災された人数の多い避難所や復旧の見込みが薄い避難所へ。同じ幹事団体の自然エネルギー協同組合レクスタやぐるっ都地球温暖化対策協議会の協力を得て、小型の太陽光発電や太陽熱温水器といった、すぐ活用が可能な小型設備を支援しました。被災地7カ所に対する合計支援は、約228万円となりました。

復旧支援フェーズ:

「つながり・ぬくもりプロジェクト」の代表的な案件となった、岩手県気仙郡住田町の仮設住宅への太陽熱温水器支援。こちらは三井物産環境基金からの助成金を獲得しての設置となりました。そのきっかけのひとつとなったのが、震災前から取得していたFSC認証のつながりです。長年、FSCの普及を進めてきたWWFも、FSC材を利用した先駆的な仮設住宅の建設に対し、初期には不足するサッシの調達先を探すなどの協力から始まり、つながり・ぬくもりプロジェクトとの繋がりが生まれました。

また、緊急の人道支援の3カ月ののち、被災地の復旧へ軸足を移しはじめた2011年7月からは、WWF「暮らしと自然の復興プロジェクト」の一環として、被災地の水産業復興に向けた自然エネルギーの提供をめざし、各地の漁業関係者の皆さんと検討を開始しました。

復興支援フェーズ:

各地の復興計画は、2011年秋ごろから自治体の長によって示されはじめましたが、議会の合意や具体的な地域への説明、さらには高台移転地の確保などの実際の動きは、報道にあるように遅々とした歩みです。その中で、水産業の本格的な復興への道筋が見えてきたのが、再開した養殖業の回復の兆しでした。

「つながり・ぬくもりプロジェクト」でも、より大型で事業所や工場でも活用できる10kWレベルの大型太陽光発電、また復興をかけたイチゴ栽培用ビニールハウスの、暖房に活用する太陽熱温水器によるシステムの開発など、本格的な自然エネルギー導入に向け、支援の規模を拡大しました。

その中で、被災された方たちの中には、つながり・ぬくもりプロジェクトの太陽光発電施設や太陽熱温水器の設置の補佐を通じて技術を学び、本格的に自身の事業を再興する際には、自然エネルギー普及の拠点としたいと希望される方も出てきました。

地域に根付き、地域で雇用を生む自然エネルギーのよさを、復興に結びつける核となる、人材の確保は重要です。

WWFジャパンでは、このような復興支援フェーズに対し、次の3件の支援を行ないました。

  1. 南三陸町の戸倉地区に再建した宮城県漁協志津川支所戸倉出張所の新事務所への太陽光発電(10kW)
  2. 被災後、電気が戻る目途の立たない石巻市尾崎地区の三條造船所への太陽光発電(10kW)
  3. 東日本大震災により生活が困難になってしまった家族、特に放射線量の高い地域での生活を強いられている子どもたちを支援する「手のひらに太陽の家」への太陽光発電(7kW)

いずれの設備も、一般家庭のエアコンを除いた消費電力約3kWの数倍の容量を備え、余剰電力は連系を通じて東北電力に売電し、長期的に経費の削減に繋がる支援を計画しました。

そして将来的に、これらの設備の今後の活用を通じて、地域の皆さんの自然エネルギーに対する理解が進み、復興に向けてさらに多様な自然エネルギー利用に結びつくことを期待しています。

関連情報

住田町の仮設住宅

住田町の仮設住宅に設置される温水器

登米市の小学校に設置された太陽熱を使った温水器

プロジェクトの支援で戻った明かり。石巻市の中学校にて

南三陸町戸倉滝浜地区に設置された太陽光パネル

一般の家庭に支援された温水器。南三陸町にて

戸倉出張所新事務所の上に設置された太陽光パネル

自身で被災した方々も、プロジェクトに参加しました。

屋根の上から見たところ

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