知らない場所で、日本のエネルギー政策が決められていく?


日本を襲った震災と原発事故。どんな形であれ、これからのエネルギー政策は変わるはず、原発などはもってのほか。「頼りなく見える現政府でも、それぐらいはわかっているはず…」

そんな期待をお持ちの方は多いのではないかと思います。
でも今、そんな期待に冷や水を浴びせかけるような事態が進行しています。

6月7日、政府の「新成長戦略実現会議」で、「エネルギー・環境会議」の設置が決まりました。この会議は来年に向け、「革新的エネルギー・環境戦略」を議論していく場です。
7月中旬には、その中間的整理がまとまり、その中で、日本のエネルギーの将来を決める「エネルギー基本計画」の方向性が決まります。

そしてそれを受け、「今の」基本計画を作ったのと同じく、経済産業省の「総合資源エネルギー調査会」の下に作られる専門委員会で中身が固められていく予定です。

ところが、ここに大問題があります。

原発推進や化石燃料依存を含む「現状路線」を継続したい経済産業省や、その背後にいる業界の強い影響力の下で、議論の内容が決まって行く可能性が、すごく高いことです。

7日に発表された資料では、その兆候が既に顕れています。6つの重要論点には、「省エネルギー」や「自然エネルギー」と並列で「原子力」や石油・石炭・ガスなどを含む「資源・燃料」が挙げられています。

「原子力」は「安全性への挑戦」とありますが、一度「重要論点」として入り込んでしまえば、後々「これからも『安全性の確保を前提として』推進します」という議論(つまり震災前と全く同じ)に、置き換えられる可能性が大です。温暖化を進めてしまう化石燃料についても同様。

さらに大きな問題は、こうした議論の情報が、おそらく中途半端にしか国民に提示されない可能性が高いことです。

本来ならば、こうした問題については、国民の声を聞きながら、抜本的な見直しをやっていくべきものですが、そうした兆しは残念ながら見えません。

WWFジャパンも参加しているNGOの集まり・eシフトは、この情勢に危機感を募らせ、本日見解を発表。政策決定のプロセスへの国民参加と、情報の開示を強く求めました。(温暖化担当:山岸)

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自然保護室長(気候エネルギー・海洋水産・生物多様性・金融)
山岸 尚之

立命館大学国際関係学部に入学した1997年にCOP3(国連気候変動枠組条約第3回締約国会議)が京都で開催されたことがきっかけで気候変動問題をめぐる国際政治に関心を持つようになる。2001年3月に同大学を卒業後、9月より米ボストン大学大学院にて、国際関係論・環境政策の修士プログラムに入学。2003年5月に同修士号を取得。卒業後、WWFジャパンの気候変動担当オフィサーとして、政策提言・キャンペーン活動に携わるほか、国連気候変動会議に毎年参加し、国際的な提言活動を担当。2020年より自然保護室長。

京都議定書が採択されたときに、当地で学生だったことがきっかけでこの分野に関心をもち、大学院を経てWWFに。以来、気候変動(地球温暖化)という地球規模の問題の中で、NGOがどんな役割を果たせるのか、試行錯誤を重ねています。WWFの国際チームの中でやる仕事は、大変ですがやりがいを感じています。

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