残された2羽のアデリーペンギンのヒナ


南極から非常にショッキングなニュースが飛び込んできました。

南極大陸に生息するアデリーペンギンのとある1つのコロニー(集団繁殖地)で、ヒナが大量に餓死し、わずか2羽のヒナしか残されていないということが分かりました。

アデリーペンギンは南極大陸に生息する4種のペンギンのうちの1種で、体長は最大75cm、体重は3.7~5.0kgほど。

ヒナの死骸を捕食するオオトウゾクカモメ。

758万羽が生息していると推定されています。

今回の事象が起こったコロニーではおよそ18,000組のアデリーペンギンのつがいが生息しています。

ヒナの大量餓死を引き起こした原因は、コロニーがある営巣地の周辺の海に、季節外れの海氷が現れたためとされています。

この氷によって、主食のオキアミなどがいる海域までの距離が遠くなり、親ペンギンたちがヒナの元へ戻ってくるまでに長い時間を要したため、ヒナが飢え死んだと推測されています。

息絶えてしまったアデリーペンギンのヒナに寄り添う親ペンギンの姿。
「息絶えたヒナが散乱している姿は、多くの人がアデリーペンギンに抱いている愛らしいイメージとはかけ離れたものであった。」と、WWF極地プログラムの担当ロッド・ダウニーは、その悲惨な状況を語りました。

この営巣地では、4年前にも異常に温暖な気候と雨の日が続いた後の寒波の影響で、ヒナが凍死し全滅したという事態も起きていました。

現状、アデリーペンギンは絶滅の危機に瀕してはいませんが、このように数年という期間で繁殖の失敗が続くと、いずれは種の存続も危ぶまれることになるかもしれません。

今回の事象を引き起こした極端な気象が、地球温暖化によるものなのか、科学的に確かな因果関係は今のところわかっていません。

アデリーペンギンの繁殖期は、10~2月の短い南極の夏の間。本来ならばこのような親子ペンギンの姿が見られたはずなのですが・・・

しかし、少なくとも過去にはなかった大きな規模で、環境が変化しつつあることは事実。

気候変動とも呼ばれる温暖化の問題が、そうした大きな脅威の一つになりつつあることも、間違いありません。

遠い場所に棲む動物たちのためにも、日本で出来ること、すべきことに尽力をしなければと改めて思いました。(広報:山本)

関連情報

今回の事象が起こったのは南極大陸東部のアデリーランド地域(Terre Adélie)です。

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WWFジャパン ブランド・コミュニケーション室 メディア グループ長
山本 亜沙美

大学時代の専攻していた海洋生物学をきっかけに、絶滅危惧種や環境保全活動に興味を持ち始める。2005年卒業後、米セントラルフロリダ大学院にて生物学を学び、2007年に卒業。卒業後、航空会社にて運行管理のオペレーション業務に携わった後、2010年にWWFジャパン自然保護室アシスタントとして入局。2013年より広報・プレス担当として、取材対応、記者発表などをはじめとしたメディアリレーション、イベント企画・運営などに携わる。2018年7月からメディアグループ長として、広報全般・WWFジャパンのブランドコミュニケーションを担当する。

海洋生物学が専門のリケジョな広報プレス担当です。人の心に響くものはいつの時代も変わらずですが、今は伝える手法が多様化しつつあります。情報のトレンドを追いかけ、常に一歩引いた視点で物事を見るように心がけています。休みがあればスクーバ&スキンダイビングをしにどこかの島に行っています♪

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