イワシクジラの捕獲はワシントン条約違反?


スイスのジュネーブで開かれていたワシントン条約(CITES)の第69回常設委員会会合が閉幕しました。

今回の常設委員会では、日本が北太平洋で行なっているイワシクジラの調査捕鯨が、ワシントン条約に違反しているのではないか、ということが議題にのぼり、注目されました。

ワシントン条約は絶滅のおそれのある野生生物を、密輸や過剰な取引から守るための国際条約です。

その条約でなぜ、捕鯨が問題になったのでしょうか。

今回ワシントン条約の常設委員会が開かれたジュネーブ。会合は、条約の施行を適切に進めるために、通常年一回開催されています。

理由は、この条約では各国の200カイリの外側、つまり「公海」での漁業を、国境を越えて行なわれる「国際取引」と同じものとして扱っているため。

つまり、条約で現在、商業取引が原則禁止されているイワシクジラの「商業捕鯨」は、規制の対象になっているのです。

日本政府はあくまで、自国の捕鯨を「学術目的の調査」、つまり「非商業」だと主張してきました。

しかし、調査捕鯨で獲った鯨肉を販売して利益を得ているなど、日本の調査捕鯨には商業的な要素があることから、今回の会合でも「これは条約に違反する商業捕鯨ではないか」という指摘が行なわれたのです。

イワシクジラ。ワシントン条約の附属書Ⅰに掲載されており、商業取引が原則禁止されています。

ワシントン条約は、野生生物の国際取引を規制するもので、捕鯨の是非を決める条約ではありません。

しかし、「国際取引」をどう解釈し、扱うかで、調査捕鯨のような問題にも関係してきます。

捕鯨については愛護の観点から強く反対する主張が注目されがちですが、ワシントン条約はあくまで、その持続可能な利用をも視野に入れた、野生生物の保全を目的とする国際条約。

私たちもその目的が達成できるように、日本政府にもこのイワシクジラの問題を含め、条約の適切な施行と対応を行なうよう、求め続けていきたいと思います。(トラフィック 白石)

常設委員会会合の様子。クジラに限らず、ワシントン条約では、国境を越えて行なわれる取引や漁業について、非商業的側面が明確でない限り、「商業目的」と解釈することになっています。

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