本の紹介『消えゆく熱帯雨林の野生動物』


自然保護室の小林です。
よく耳にする「熱帯林の保全」という言葉。 大切な事だな、と思ってはみても、なかなかその中身までイメージできない、と思われることがありませんか?

今日は、そんなお気持ちを抱かれたことのある方にぴったりの本を、ご紹介したいと思います。

題して『消えゆく熱帯雨林の野生動物』(化学同人、2015年8月出版)。筆者は、長年ボルネオ島で野生動物の研究を続けてこられた、松林尚志博士です。

本書は、私たちWWFも保全活動を行なっているボルネオ島をはじめとした熱帯林のフィールドで、実際に取り組まれた調査の現場からつづられたもの。

樹上生活者と考えられてきたオランウータンに関する意外な発見や、野生のウシ、バンテンの知られざる生態、そして激しい密猟にさらされているセンザンコウの調査に現地の学生と取り組んだ話など、豊富な経験に基づいたストーリーが生き生きと語られています。

また、最後にはボルネオ島を飛び出し、インドやアフリカ、アマゾンの動物までもが登場。フィールドの世界の奥深さを、分かりやすく教えてくれます。

ただ、こうしたワクワクするような動物たちの話の一方で、もう一つのキーワードがタイトルの通り「消えゆく」という言葉。

実際、本書で紹介される野生動物のほとんどが、絶滅の危機にあるとされています。

彼らは今、どのような問題にさらされているのか。

そして、その保全を進める上で、基礎的な生態や遺伝に関する調査がいかに大切であり、活かすべきものであるかが、科学者の視点から明快に書かれています。

松林博士は本書を、これからの調査や保全を担う若い人たちに向けたものとして執筆されたそうですが、野生生物の調査やそのフィールドにご関心をお持ちの方ならば、きっと惹き込まれる一冊です。

ぜひ手に取ってみてください。

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自然保護室(淡水)
小林 俊介

修士(動物学・京都大学)
京都大学在学時にボルネオ島での野生動物の行動学を専攻。ボルネオの豊かな生物層の魅力を知るとともに農園開発などの環境課題の大きさを実感する。2013年にWWFに入局。ボルネオ島での絶滅危惧種保全、持続可能な森林・農園管理、ESDなどの活動を担当。2018年よりサンゴ礁保護研究センター長。サンゴ礁保護研究センターの地元移譲を経て2021年から現在まで淡水グループ繊維担当と、海洋グループ白保担当を兼務。

子供のころからの動物好きが高じて、東南アジアでの野生動物の研究に携わった後、WWFへ。森林、海洋、淡水と様々な分野を担当し、持続可能な資源管理を中心に海外・国内のフィールドにも携わってまいりました。フィールドで豊かな自然とそれを守るために頑張っている仲間たちと交流するのが何よりの楽しみです。

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