アマゾンマナティーの野生復帰プロジェクト
2017/07/13
先日、南米のアマゾン川流域に生息する固有種アマゾンマナティーの野生復帰のお話しを海洋生物学者の菊池夢美さんより聞く機会がありましたので少しご紹介をさせて頂きます。
アマゾンマナティーは、淡水に生息する草食の大型水棲哺乳類で、ブラジル、コロンビア、ペルー、エクアドルに生息し、IUCNのレッドリストで危急種(VU)に指定されています。
かつて、マナティーはその丈夫な皮膚を工業用ベルトコンベアなどの部品として利用するため乱獲され、大きく数を減らしてしまいました。
そして、今も食肉目的の密猟が続き、密猟者の間で特に美味しいと言われている仔を連れた母親マナティーばかりが狙われるのだそうです。
菊池さんは密猟によって親を失った仔マナティーや、負傷したマナティーを保護し、再び野生へ帰すプロジェクトを2009年から参加してきました。
保護されたマナティーは、飼育下で健康を取り戻した後、人工の湖で自力で餌を食べることなどの野生で生きていくための力をつけます。このような3~5年にわたる段階的な訓練で、9頭のマナティーが野生へ帰っていきました。
放流後は、体に装着された小型の記録計(データロガー)や、地域の漁師の協力によって追跡調査が行なわれ、健康状態や野生に適応しているのかどうかが観察されます。
野生で生き延びたから成功なのか、子孫を残したら成功なのか、一度人と接触があった動物の野生復帰は何をもって「成功」なのか、その定義は非常に難しいと菊池さんは言います。
お話しを聞き、抱えている問題や課題、地域の人々との連携など、保全の現場には、動物の種をこえた共通点があるということを改めて実感した機会となりました。