© Qwert1234 at Japanese Wikipedia

マタタビとワンヘルス


少し前に「猫にマタタビのなぞ、解明」というニュースが伝えられました。多くの愛猫家同様、私もへぇっと感心しながら読みました。

私のネコたちがマタタビをゴシゴシ身体に擦り付け、ザリザリ舐めるのは、蚊よけの為だったとは!

©Y. Kato
©Y. Kato
©Y. Kato
©Y. Kato
©Y. Kato

マタタビ(Actinidia polygama)同様、イヌハッカ(Nepeta cataria、別名キャットニップ)も多くのネコに好まれます。この植物には、「ネペタラクトン」という物質が含まれていて、蚊などを忌避する効果があることが示されていました。最近公表された岩手大学の研究は、マタタビに含まれる類似の物質「ネペタラクトール」に関するものです。

ネコが蚊に刺されると犬糸状虫 Dirofilaria immitis、一般的にフィラリアと呼ばれる寄生虫に感染してしまうことがあります。フィラリアの主な宿主はイヌなので、ネコのフィラリア症はイヌほど多くありませんが、フィラリア症が原因で命を落とすネコもいます。

気候危機によって蚊の分布域が拡大することで、フィラリア症など蚊が媒介する感染症の拡大も懸念されています。

気候危機は気候のみに影響する問題ではありません。日本の平均気温が上昇すると、デング熱などの感染症を媒介するヒトスジシマカの分布域も北へ拡大。今世紀末には秋田県にまで達するという予測があります。病気のリスクに怯え「悪い蚊は、いねがー?」と逃げ惑う未来は、なんとか防ぎたいものです。
©WWFジャパン

気候危機は気候のみに影響する問題ではありません。日本の平均気温が上昇すると、デング熱などの感染症を媒介するヒトスジシマカの分布域も北へ拡大。今世紀末には秋田県にまで達するという予測があります。病気のリスクに怯え「悪い蚊は、いねがー?」と逃げ惑う未来は、なんとか防ぎたいものです。

実は、フィラリア症は、まれではありますが人にも感染する、人獣共通感染症でもあります。飼っているネコやイヌがフィラリアに感染している場合、当然飼い主が感染する危険性は高くなります。

そう考えると、マタタビは、ネコの健康だけでなく、人の健康を守ることにも貢献しているといえるかもしれません。

愛猫が私の為(?)に一生懸命マタタビで蚊よけに励んでくれているのですから、私は蚊を増やさぬよう気候危機を解決する努力しなくてはバランスが取れません。

そしてまた、人・動物・生態系(環境)の健康をひとつと捉え、それぞれがバランスよく健全にあるべきという「ワンヘルス」の大切さをきちんと認識することが必要だと感じました(淡水・教育・PSP室 若尾)。

写真:Qwert1234 at Japanese Wikipedia, CC BY-SA3.0

ワンヘルスで守ろう、私の大切なもの

この記事をシェアする

自然保護室(野生生物)、TRAFFIC
若尾 慶子

修士(筑波大学大学院・環境科学)
一級小型船舶操縦免許、知的財産管理技能士2級、高圧ガス販売主任者、登録販売者。
医療機器商社、海外青年協力隊を経て2014年入局。
TRAFFICでペット取引される両生類・爬虫類の調査や政策提言を実施。淡水プロジェクトのコミュニケーション、助成金担当を行い、2021年より野生生物グループ及びTRAFFICでペットプロジェクトを担当。
「南西諸島固有の両生類・爬虫類のペット取引(TRAFFIC、2018)」「SDGsと環境教育(学文社、2017)」

子供の頃から生き物に興味があり、大人になってからは動物園でドーセントのボランティアをしていました。生き物に関わる仕事を本業にしたいと医療機器業界からWWFへ転身!ヒトと自然が調和できる世界を本気で目指す賛同者を増やしたいと願う酒&猫好きです。今、もっとも気がかりな動物はオガサワラカワラヒワ。

人と自然が調和して
生きられる未来を目指して

WWFは100カ国以上で活動している
環境保全団体です。

PAGE TOP